デジタル時代に信頼されるマーケターの意義--ad:tech Tokyoアドビ基調講演

 デジタルマーケティングのイベント「ad:tech Tokyo 2012」が10月30日~31日に開催された。2日目のキーノートには、アドビ システムズのエンタープライズキャンペーン/デマンドマーケティングのディレクターであるスコット・ハリス氏が登場。「デジタル時代のマーケティング:今こそマーケターが変えるべきもの」と題して、現在のマーケティングがどのようなものか、アドビがどのようなデジタルマーケティングに取り組んでいるかを語った。

 冒頭でハリス氏は、3つの調査データを紹介した。「80%のCEOはマーケターを信じていない」「70%のマーケターは、自らの仕事がビジネス成果に繋がっていないと信じてる」「69%のマーケターは、現状がクリエイティブ過多でソーシャルメディアバブルにあると考えている」というものだ。

説明 「マーケティングはビジネスを加速させる燃料」と語るアドビ システムズのエンタープライズキャンペーン/デマンドマーケティングのディレクターであるスコット・ハリス氏

 こういったデータが出ることに対して、ハリス氏は「マーケティングやマーケターへの誤解や不信感が背景にある。マーケターの仕事の一部は、それを変えて行くために経営層に明確なデータを出していく必要がある。マーケティングとは、効果的に見込み客を獲得し、それを顧客に変えるストーリーを考えることで、ビジネスにおいてリアルなインパクトを持つものだ」とマーケティングの意義や位置づけを語る。

 アドビでは現在、マーケティング費用の75%をデジタル分野に投入している。理由はシンプルで「費用に対して効果測定が容易で、クリエイティブの改善などによる成果が明確にわかるから」だという。そして「デジタルメディアは、アドビのプロダクトの強みを顧客のインサイトに対して強く結びつけることができる」のだという。

 さらにハリス氏は、「ビッグデータをどのように考えているか?」と問いかけた。あまりに流行し、ありふれてしまったこの言葉に対して、一部のマーケターは拒否反応を示しているという。だが「マーケターにデータはとても重要なもの。ビッグデータはマーケットの理解を助けるもの」とマーケティングにおけるデータやその分析の重要性を改めて強調した。

 「ビッグデータは大きなストーリーになっている。効果的に使うことでマーケットの理解について他との大きな違いを生み出せる。ビッグデータといっても、立場によって意味合いが違う。マーケターにとってのビッグデータは、顧客にインパクトをもってリーチする方法を見出すためのものだ」

 ビッグデータの活用例として、キャンペーンの効果測定とマーケティングツールの最適な組み合わせから利益を最大化するポイントを見出す利用法を示した。キャンペーンの効果測定において需要な点が、データをリアルタイムで知ることだ。「キャンペーンについて、Twitterではどのような文脈やキーワードで言及されているか、キャンペーンサイトへの流入元、コンバージョンにいたるまでに顧客がたどった導線などのデータをツールを使ってリアルタイムで知ることができる」「検索広告、ディスプレイ広告、メールなど様々なツールと、それぞれのクリエイティブの組み合わせは無数にある。マーケティングに多額の費用を掛ければ、もちろん利益も伸びるが、費用対効果は落ちる。データを集め効果を測定し最適化することで、もっとも効率のいいマーケティング手法の組み合わせを選ぶ事ができる」という。

 マーケティングについて、いつも議論となる「コスト」についても、近代広告の父と言われるジョン・ワナメーカー氏の「広告の費用の半分は無駄だが、問題はどの半分かわからないことだ」という言葉を引きながら、ビッグデータの活用によってその言葉が変わりつつあるという。「私たちは媒体とコンテンツをどのように組み合わせれば、利益をあげられるか知ることができる」と延べ、マーケティングにかかる費用を単なるコストではなく、ビジネスを加速させるための燃料であり、投資とみなすべきだという考えを示した。

 ソーシャルメディアの活用についても「62%のマーケターがソーシャルメディアへの出費を増やすことを考えているが、そのうち成果が上がると考えているのは22%にすぎない」という調査を示しながら、「しかし、ソーシャルメディアを利用しないという選択肢はもはやない」と述べた。ソーシャルメディアを通じて企業とユーザーの関係は大きく変わっており、スポーツブランドのQuicksilverがFacebookページで実施したTシャツのデザインコンテストや、ユーザーがYouTubeにアップロードしたアドビのPhotoshopのパロディーCMなどの例を示した。

 最後のトピックとして、データ分析の発達によって「広告のクリエイティブが危機に瀕している」と、言われていることに対して触れた。「商品について魅力や利点を説明するには、明確なストーリーを伝えるコンテンツが必要だ。同時に、そのコンテンツを効果的に保つためには、メンテナンスし続けることも必要。つまり、クリエイティブと分析の両方が必要。そのためにアドビは『Adobe Creative Suite』を用意している。右脳的な創造性と左脳的な論理性のバランスが重要だ」と語った。

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