マネージャーのための目標管理入門

第3回 部門目標の背景を部下に伝える

金津健治(産業能率大学総合研究所)2012年10月31日 09時00分
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 前回までに、目標管理・人事評価制度について組織的観点での定着化のポイントを紹介しました。今回からは現場の管理職の方がすぐに実践できるツールやノウハウをご紹介します。今回と次回で、目標管理・人事評価の「P(計画)」段階について取り上げます。

上司が「説明したはず」でも伝わらない部門目標

 ある企業が、全社員を対象に、毎年打ち出される組織の目標が浸透しているか、アンケートを実施しました。このアンケートで、管理職層に「組織目標をきちんと伝えているか」とたずねると、「イエス」の回答が80%を超えました。一方、部下に「組織目標をきちんと伝えてもらっているか」を尋ねた結果では、「イエス」と「ノー」が半々に割れました。

 この上下のギャップを追跡調査すると、製造部門のある管理職からは「ちゃんと説明した」と言う回答があったものの、その管理職の部下から以下のような発言が得られました。

 担当者「課長に『毎年繰り返し設定されるクレーム低減の目標の設定背景は去年とどう違うのか』とたずねたら、『年度方針書を説明しただろ?ブレークダウンしろよ』のひと言でおしまいです。背景説明なんかありません。これで納得なんかできるわけありませんよ」

 上司の安易な説明・指導の実態が暴露される結果となりました。

 あなたなら、どのようにメンバーを納得させますか?

組織目標意味づけシートの活用法と期待効果

 管理職は、部門の目標設定の背景をメンバーが分かる言葉で伝えなければいけません。これは絶対に必要なことです。部門の目標設定の背景を伝えるにあたり、実践の場ですぐに使うことができるツール「組織目標意味づけシート」をご紹介しましょう。

図表.組織目標・方針の意味づけシート。目標・方針: 設計品質の向上。金津健治「管理職のための七つの道具術」
図表.組織目標・方針の意味づけシート。目標・方針: 設計品質の向上。金津健治「管理職のための七つの道具術」

 このシートは、数多くの管理者研修で、優れた説明サンプルを解析し、抽出した「きっかけとなる動機」「たとえば」「メンバーへの影響」「ねらい」の4つのキーワードで、整理したものです。これに基づいて部門の目標を設定した背景を整理し、部下に伝えると、部下の納得を得ることができるでしょう。年度初めに部門目標を伝達する機会に限らず、上期が終わったタイミングで下期に向けての部門目標、期中での部門目標の変更時の背景説明にも活用できます。

 このシートの活用方法は以下の通りです。図表のシートは、サンプルですので、「設計品質の向上」という目標を設定して、ひととおり記入してあります。

ステップ1 シートを準備する

 年度目標に関連する資料と組織目標意味づけシートを用意します。シートを作成する際に、部門の目標をあらかじめ決め、シートの最上段に記入します。

ステップ2 「きっかけとなる出来事」を整理する

 目標設定のきっかけとなった出来事や影響などを整理し、意味づけ内容の欄に記入します。これにより、目標の重大さが明確になります。シートの例では、競合の追い上げで受注が減少した事実を挙げています。

ステップ3 「たとえば」を整理する

 目標を達成した状態をメンバーに分からせるために、目標達成に向けた手段や方法を考えます。シートの例では、品質管理マニュアルの勉強会を実施するとしており、設計品質の向上という目標に向けてメンバーの設計力を高めていくことの必要性がすっきり整理できます。

ステップ4 「メンバーへの影響」を整理する

 部門の目標とメンバーの業務との関係に気づかせるため、目標に取り組むしんどさ(デメリット)とメリットを示します。シートの例では、勉強会準備業務が増大することがデメリットとして記載されている一方、メンバーの設計力の向上、さらにはお客様に感謝され、やりがいも増えるというメリットが記されています。

ステップ5 「ねらい」を整理する

 目標管理の真の成果である組織と個人の成長・発展との結びつきを整理します。シートの例では、競争力強化とメンバーの設計力向上が2つ記載され、まさに「目標による管理」のとおり、部門目標と個人の目標が一致していることをご理解いただけるのではないでしょうか。

ステップ6 職場でシートを活用し、設定背景を説明納得づける

 以上ステップ1から5によって管理者が整理した意味づけシートをもとに、課会などの職場会議で質疑応答を入れながら部下に対して説明します。4つの視点の内容が重複するところもありますが、部下に様々な角度から目標設定の背景を分からせることが大切です。

金津健治

産業能率大学総合研究所

主席研究員

1954年生まれ。慶應大法学部卒。金融機関、コンサルティングファーム勤務を経て、87年学校法人産業能率大学入職。メーカーからサービス業まで、幅広い業種で、目標管理制度・人事評価制度の導入や定着化のコンサルティング、研修分野で活動。管理職研修や被評価者研修などの実績も多数。著書に「七つの能力-管理職前に身に付ける技法42」(日本経団連出版)、「目標管理の手引き」(日本経済新聞出版社)、「管理職のための七つの道具術」(プレジデント社)など。

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