モバイル開発プラットフォームとしてのHTML5の信頼性について世の中では疑問の声が上がっているものの、本記事ではHTML5がモバイルアプリの土台として重要な役割を果たす理由について解説する。
Facebookの最高経営責任者(CEO)であるMark Zuckerberg氏が、HTML5をベースにしたモバイルアプリを開発するという同社の決定を「過ちだった」と述べたかのような記事が報道された際、モバイル開発プラットフォームとしてのHTML5の未来に影が差したと受け止める向きも多かった。
ただ、モバイルアプリの開発においてHTML5を捨て、ネイティブアプリへと移行している企業も多くある一方、HTML5を採用しているFinancial TimesやLinkedInといった大手企業もある。実際のところ、先ほどのZuckerberg氏の発言は文脈から切り離して引用されたものであり、同氏自身はFacebookが将来的にHTML5を大々的に採用することについて「高揚感を抱いている」と述べている。
世界的な旅行テクノロジ会社であるSabre Holdingsも、HTML5について同様の高揚感を抱いている。この会社はlastminute.comやTravelocityといった旅行サイトの運営だけでなく、世界中の大手航空会社や旅行会社にソフトウェアを提供している。同社は主力アプリである「TripCase」(「Android」端末や「iPhone」「BlackBerry」に対応している)のほとんどの部分を、HTML5とJavaScriptに切り替えているところである。
Sabreのソフトウェア開発部門担当バイスプレジデントであるTomek Krzyzak氏は、TripCaseをHTML5とJavaScriptに切り替える(つまり、どのモバイルプラットフォーム上でも動作可能にする)ことで、さまざまな携帯電話への対応が容易になると述べている。
TripCaseでは、アプリのインターフェース描画にHTML5が使用され、アプリにおけるクライアント側ロジックの制御にJavaScriptが使用されている。また、アプリはプラットフォームごとに用意されたネイティブコードシェル内で動作する。これにより、各プラットフォーム上でプッシュ型の電子メール通知といったプラットフォーム固有の機能も利用できるようになる。なお、こういったアプリはプラットフォーム別のアプリストアからダウンロードできる。
Krzyzak氏は、HTML5がモバイルアプリ開発プラットフォームとして成熟しきっていないという欠点を克服していく必要があることを認めているものの、モバイルプラットフォームの数の多さを考えると、やがては開発者からの支持が得られるようになると確信している。
同氏は「ある時点が来れば、皆それを使用するようになると予想している」と述べている。
「モバイルデバイスの乱立状態は無視できないほどになっている。これは30年前、PCの標準が数多く存在し、各社が独自のPCを製造しようとしていた頃とよく似ている」(Krzyzak氏)
同氏は、モバイルプラットフォームが標準に準拠するのは5年から10年先になるだろうと述べたうえで、さまざまなプラットフォーム向けのアプリ開発を管理しやすいかたちで行うための選択肢として、HTML5が事実上の標準になるだろうと予想している。
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