インナーイヤーヘッドホンで7.1chサラウンド--オーディオテクニカ「ATH-DWL3300」 - (page 3)

インナーイヤーという新体験と手持ちのヘッドホンに新たな活用法

 いよいよ試聴へと進む。映画と音楽のブルーレイディスクで臨場感などを確認していく。試聴環境としては、ソニーのブルーレイディスクレコーダー「BDZ-AT700」を使用した。

 映画は、ドルビープロロジックIIxのMOVIEモードにて「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン 3Dスーパーセット」のDISC1(3Dブルーレイ)を試聴。チャプタ20での建物内から人が降下し、銃撃戦となるシーンでは、緊張感あふれる足音や敵に着弾する金属音、爆発音などがあらゆる方向から聴こえてくる。背後から近づいてくる車や流れていったミサイルの残響音など、インナーイヤータイプでも問題なく音が回ることを実感できる。思った以上に定位感があり、セリフも聴き取りやすい。

 音楽は、ドルビープロロジックIIxのMUSICモードにて「MISHA 星空のライブV Just Ballade with 星空のオーケストラ2010」を試聴。彼女の代表曲の一つである、チャプタ8の「Everything」を聴く。全編生演奏のオーケストラを擁し、ライブならではの空気感が音を通してひしひしと伝わってくる。壮大な音色や各パートの鳴り、ギターのクリアな旋律がしっかり聴こえ、MISHAの伸びやかなボーカルとあいまって心地いい。音の広がりが感じられるため、自宅に居ながら会場に居るような感覚を味わえる。

 なおドルビーヘッドホンは、前面パネルのインジケータを確認する限り、5.1chソースだとほぼ自動的に動作しているように見えるが、好みに合わせて選択可能だ。また、バスブースト機能はオフも含めて6段階あり、フロントからサイド、後方の順に低音を足していくことができる。音楽ソースでは特に効果がはっきり出る。

  • BDディスクなどを再生すると、自動的にソースの音声を認識しトランスミッタの前面のインジケータが点灯する。消すことも可能だ

  • 前面左から電源、ソース、デコード、ドルビーヘッドホンやバスブースト、音声チャンネルのインジケータを用意

 最後に私見となるが、手持ちのヘッドホンを使用した場合はどのような違いが出るかを3モデルほど試してみた。1つ目は同じオーディオテクニカのインナーイヤータイプで、低音を重視した「SOLID BASS ATH-CKS77」。二つ目は、ソニーのMAシリーズ最高峰、オープンエアー型モデル「MDR-MA900」。三つ目は、SHUREの密閉型モニターヘッドホンの中堅モデル「SRH840」。それぞれ上記環境、同条件下にて映画を試聴してみた。

  • お気に入りのヘッドホンが7.1chサラウンドヘッドホンに変わる

 ATH-CKS77では、セリフが控えめになる代わりに迫力やBGMが増強。銃撃音はさらに重い印象になる。低音寄りとなることから、少し音がつぶれそうになる場面もあった。

 MDR-MA900では、オープンエアー型ならではの音抜けの良さがいかんなく発揮され、細やかな描写とともにバランスの取れたサウンドに変化。銃撃音は控えめになるが、全体像を把握できる感覚は好相性と言える。

 SRH840では、セリフがより鮮明になり、音にメリハリが出るだけでなく、場面に応じたリアルな音が聞こえる。銃撃音は自然な鳴り方で迫力を損なわない。いずれのモデルも、それぞれの音の特性を活かしたサラウンドが聴けるため面白い。ソースに合わせて楽しみ方は無限大となりそうだ。

 現在では生産完了となってしまっているが「手持ちのヘッドホンがサラウンドヘッドホンになる」というふれこみで言えば、ビクターのヘッドホンサラウンドアダプタ「SU-DH1」を思い出す人も多いことだろう。ただしこの製品ではドルビープロジックII対応の5.1chサラウンドだったため、7.1ch対応の本製品との迫力の差は歴然と言える。そして何より、7.1chサラウンド対応アダプタになりえるものはほかにないことから、現時点で唯一の存在となっている。

 HDMI接続に対応していない点だけが悔やまれるが、それを除けば、かつてない手軽さをもって最新サラウンドの恩恵を堪能できること、自分のお気に入りのヘッドホンが活用できることなど、まさに日本ならではのサラウンド環境に対して新たなスタイルを提案する逸品に仕上がっている。

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