ロンドン「Tech City」の熱気--五輪を機にスタートアップ分野も加速 - (page 2)

別井貴志 (編集部)2012年08月27日 14時30分
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 このように、オリンピックを機会に再開発が進み変貌を遂げるロンドンで、もっとも活気づいているのがTech Cityだ。「UK Trade & Investment」の投資機関である「Tech City Investment Organization」でChief Executiveを務めるEric Van Der Kleij(エリック・バン・デル・クライ)氏は、「2010年11月4日に英国首相であるDavid Cameron氏からロンドンに新しいクラスター(集まり)を作ろうというビジョンが語られました。この地域はテクノロジーやデジタル、クリエイティブ関係の企業や人びとのクラスターが育ちつつあり、このようなクラスターの成功を加速させることが私どもの仕事なんです」と言う。

  • ツイッターを利用した「Tech City Map」。青いのが企業オフィスでその上にカーソルを合わせると企業名が表示される。赤線が片方向、緑線が双方向で企業名を言及している。時には日本語のツイートが表示されることもある。

 London & Partnersが市長の機関である一方で、「Tech City Investment Organization」は英国首相の機関であり、互いにさまざまな場面で連携している。

 活気づいている様子がうかがえる例として、同氏は「Tech City Map」を紹介してくれた。このサイトでは、クラスターの内部にある企業がお互いに連絡を取り合っているところがリアルタイムで見える。モニタリングツイッターで作られているそうで、ツイートしたときに1つの企業がほかの企業の名前を使ったときに地図に表示される。この場合は片方向での表示だが、2つの企業が互いの名前を使ったときには双方向の線で表示される(左画像参照)。「企業同士が互いに仕事をしていることを実証できているわけです。またクラスターが自然な形で成長していることを示しています」(同氏)というこのマップが、最初に発表されたが2010年9月頃だった。最初は700社程度だったが、現在は1259社に増えている。

「Tech City Investment Organization」でChief Executiveを務めるEric Van Der Kleij(エリック・バン・デル・クライ)氏 「Tech City Investment Organization」でChief Executiveを務めるEric Van Der Kleij(エリック・バン・デル・クライ)氏

 同氏は、「私たちの仕事の中心は、London & Partnersと協力して企業や才能のある人材を誘致するもしくは起業家、投資家に紹介することです。経済全体としては困難な環境にありますが、この地域の成長は目覚ましいものがあります。特に、首相はこの地域の成長を妨げるような政策は導入しないようにしたことが重要な点です。そのため、私たちのほうから、国政に直接的な提案をしています」と語り、影響力を持つ政策のいくつかを説明した。

 まずは、支援的な経済環境をつくることを目的にした「移民政策」があり、優れたビジネスアイデアを持ち、投資家(ベンチャーキャピタルなど)から相当程度の投資(最低5万ポンド、約620万円)が受けられるという条件満たす海外の起業家を積極的に受け入れる「起業家ビザ(Entrepreneur VISA)」を導入した。

 2つめの政策は、新しいキャピタルゲイン課税(有価証券の譲渡による所得に対する課税)で、一定の起業家においては譲渡益の生涯累計額が1000万ポンド(約12億円)に達するまで、10%の軽減税率が適用される。通常は税率が18%、28%の2段階なので、かなり優遇されている。

 3つめの政策は、「R&D Tax Credit」で、多くのTech Cityの企業は新しいテクノロジーを扱っているが、研究開発に関しての免税措置が中小企業〈従業員500名未満〉においては、2008年4月から175%に、2011年4月から200%に、2012年4月から225%(金額の上限はある)にそれぞれ引き上げられた。簡単にいうとたとえば、起業家が新しいことを調べるためのR&Dに100ポンド(1万2000円)使ったとすると、その年度が終わったときに、研究費用100ポンドに対して、政府から免税措置として225ポンド(2万8000円)をもらえる。これによって、起業家が新しいことに挑戦する励みになるという。

 このほか、新しい政策として「パテントボックス」というものもある。特許を所有している英国企業は、その特許から得ている収入(ロイヤルティーと販売価格の両方に含まれる収入に適用)に対する税率が10%まで引き下げられるという政策で、2013年には法制化され、2014年4月から施行されることが期待されている。

 このように、Tech Cityに集うテクノロジーやクリエイティブ分野のベンチャーやスタートアップ市場の成長を促すような支援に力を入れているが、Eric Van Der Kleij氏は最後に具体的な例を挙げつつ、日本の企業にも進出や投資をアピールした。

 「Tech CityにGoogleから多額の投資があり、Tech Cityの中心部にある非常に大きな建物をGoogleが使っています。またCisco SystemsはTech Cityに1億ポンド投資することを約束しました。こういう会社がなぜ、このようなコミットをしているのでしょうか。現在、Tech Cityで起こりつつある新機軸、革新というのは、古い企業の役に立つ、つまりいままでの古い企業が新しい企業のイノベーションを使ってこの次の世代に向けて成長していくというお手伝いをTech Cityができるということです。GoogleがTech Cityにやってきて、起業家と非常に密接な関係を持つようになりました。時には同じ建物の中で一緒に仕事をします。これは起業家にとってもいいことです。古い会社にとってもいいことです。Googleのために、起業家が何か新しい発明をしたとします。その場合には、いちいちシリコンバレーまで出かける必要はないのです」

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