8月16日、福島県三春町で移動型イベント「ニコニコ町会議 in 三春」が開催された。「町ニコニコのど自慢」や「ゲーム実況」、「町つくってみた」など、さまざまなイベントが同時に開催されたほか、グッズ販売コーナーには長蛇の列ができるなど盛況となった。ドワンゴによれば、1万4250人が来場したという。
同日会場に訪れていたニワンゴ代表取締役社長の杉本誠司氏に、ニコニコ町会議を開催した経緯や、地方でイベントを実施した意義、今後の展開などについて聞いた。
(4月に幕張メッセで開催された)「ニコニコ超会議」を開催したことがきっかけになっています。このイベントに10万人近い人たちに来ていただいたとはいえ、本当に全国の人たちが来れたかというとそうではありません。またniconicoが今年6年目を迎え、改めてその中身を見直した時、全国にいろいろなコンテンツがあることを再認識しました。そこで改めて、全国のコンテンツと出会うきっかけ作りをしなければいけないと思ったのです。
しかも現在は、リアルな社会そのものがクラウド的になっているように感じています。東京が主体となってやらなくても、各地のコンテンツを軸に盛り上がることができているのですね。各地の盛り上がるもので盛り上がるのが正しい形であり、そうしたクラウド的な盛り上がりを作り出すというのが、町会議のコンセプトでもあります。
特定の基準はないのですが、我々は何かにつけ話題性を重視しているので、およそ4400通の応募の中から、話題になるストーリー性があるものを吟味して選びました。たとえば長万部であれば、イメージキャラクターの“まんべくん”がニコニコ超会議に来てくれていたこと、鳥取であればniconicoの会員が日本で最も少ないことが、話題性につながると感じました。
今回の三春町では、応募者のメールに「今年限りで学校が廃校になってしまうので思い出作りをしたい」というメッセージがあり、そこにniconicoが入っていって盛り上げられれば、応募者だけでなく福島の人たちにも思い出として残すことができる。そう感じました。東日本大震災の被災地である福島を元気づけたいというのも、思いとしてはありますね。
準備は事実上、5月に入ってからなので2カ月とちょっとですね。最初は開催が怪しいという見方をされていましたが、幸い、各地の自治体や観光協会の方々が積極的に協力してくれました。これは我々もびっくりしたことで、佐賀では県知事にも来ていただきました。
町会議では特に若い人が多く集まってくれており、地元の方々に良い意味でショックを与えたようです。このイベントを通して、今までniconicoを知らなかった人たちに、触れてもらえるきっかけを作ることができたことは、成果として大きいと感じています。
私たちの狙いは、あくまできっかけを作ることです。テレビはイベント提供者と受動者が完全に分かれていますが、我々のイベントの場合、基本的な場は用意するものの、そこで楽しませるのも、楽しむのもユーザーです。最終的には、場そのものをユーザー自身が提供するようになり、自発的にイベントを実施するという流れを作っていければ素晴らしいですし、それができると思っています。
リアルな場でのイベントといえば通常、サービスを宣伝するブースを作っておしまい、という形になりがちで、一緒に盛り上がることはできません。ですがniconicoはユーザーが作ってユーザーが楽しんでいるサービスですから、それを一緒に作り上げていけるサービスになれるし、リアルな文化にも溶け込んでいけるのかなと思っています。
収支で見れば、やはり赤字にはなるでしょう。それでも長い目で見れば、ユーザーが長期的に滞在するようになったり、プレミアム会員になってユーザー同士で触れ合いを高めたりするきっかけにもなりますから、短期的な収支はあまり考えていません。もっともそのためには長く使ってもらえるサービスを作る必要があると感じています。
いま日本には、そうした無駄なことが望まれているのではないでしょうか。行政がやらない、国がやらないのであれば我々がやってしまおう、という所ですね。合理的な方法に行くのは簡単ですが、無駄、すなわち遊びの部分がなくなってしまうことで、発展途上の可能性が消えてしまう。それはよくないと思っています。
そうしたことを理解してくれるユーザーがいるならば、続けるための資金援助としてユーザーになってくれる可能性もあります。単に付加価値のあるものを提供して買い取るのとは違うサービス、ビジネスモデルが生まれているんじゃないかと感じますし、そうした取り組みが増えることで、物事の対価に対する価値観も変わっていくのではないかと思っています。
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