日本からアジア進出を志す企業が急増している。自らオフィスを持つ企業もあれば、レンタルオフィスをベースに活動する企業までさまざまだ。
そんなアジア進出の選択肢の1つとして「コワーキングスペース」を選ぶということができるようになってきた。4月には、シンガポールの中心地にコワーキングスペース「SQEA@Orchard(スクエア・アット・オーチャード)」がオープンしている。
SQEAを運営するのは、シンガポールを中心に日本企業のアジア進出支援をおこなっているWCC SOLUTIONの野瀬正一氏だ。幼少期をフィリピンで過ごした野瀬氏。社会人になってからは仕事でアジアへの出張が多かったこともあり、アジアでのビジネスチャンス、そして今後の可能性を強く感じていたという。そして4年前にシンガポールに行き現地で会社を興し、日本企業のアジア進出支援事業を開始した。「日本国内だけでなく、グローバル化する社会の中でアジアをチャンスだと感じ、『アジアに出なきゃ』という思いで行った」(野瀬氏)
シンガポールの人口は400万人程度。数としては決して大きくないが、同国にヘッドオフィスを置いてアジア全域への拠点とする企業も多い。また、人口の9割近くがスマートフォンユーザーであり、ITインフラの環境も整っている。そのため近年多くのIT企業が進出を図っている。国をあげて、外資獲得に向けた企業支援を手がけているのも大きい。野瀬氏も、シンガポールを含むアジア全体の勢いに関して、「ここ15年くらい成長を感じる」と語っている。
また、シンガポールは4つある公用語のうち1つが英語ということもあり、自然と海外の情報に触れる機会も大きい。グローバルな人材や市場を持つ国としての魅力も高いと野瀬氏は語る。
SQEA@Orchardは、フリーアドレス席で24席、専用のデスクが12席ほどある。月額は4万3000円から利用が可能だ。
アジア市場の盛り上がりに加え、東日本大震災の影響から移住や本社移転などをおこなう個人や企業が増えてきたと野瀬氏は語る。このようにシンガポール進出をしようと考えている人たちをつなぎ、そこから新しいコラボレーションを生み出すことが、ひいては本業にもつながると考え、スペースをオープンしたという。
「シンガポールにいると、『どういった会社であるか』ということに関係なく、同じ日本人同士という仲間意識が生まれる。そうした横のつながりが、それぞれのビジネスに対して相乗効果を生むことを狙ってる」(野瀬氏)
対象とするのは、日本である程度の経営基盤を持っているベンチャーや中小企業。企業ごとに閉じたシェアオフィスではなく、オープンなコワーキングスペースを作ることで、入居者同士がコミュニケーションをとることができ、さらに人や情報が集まるというサイクルを生み出すことを狙う。
アジア圏に進出する人や企業が増える一方で、彼らを支援する人はまだまだ少ない。だからこそSQEAの意義は大きいと野瀬氏は語る。
「企業や人、情報がこのスペースに集まることで活性化する。それがひいては起業や海外進出のハードルを下げることにつながっていく。こうした動きが、社会的な貢献へとつながる」(野瀬氏)
特にIT分野などは、ある程度小さな規模からでもグローバル展開を考えやすい。そういった層に対して、意味のあるスペースを作っていきたいと語る。今後は、セミナーや講演などのイベントを通じ、シンガポールに関する文化や情報に関してもっと発信していく。
海外を視野に入れている企業は、ただ拠点を作ることが重要なのではなく、いかにネットワークを作っていくかが重要になる。こういう点においても、コワーキングのメリットは大きい。SQEAのようなスペース、そしてこのような動きから、海外で勝負できる新しいサービスも生まれて来るのではないだろうか。
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