ソニックスは8月2日、電通デジタル・ホールディングスが運用する「電通デジタル投資事業有限責任組合(電通デジタル・ファンド)」を通じて、同社を引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。
同社にとっては初の資金調達。金額は非公開だが、数千万円規模だという。獲得した資金をもとに、開発力とマーケティング機能を増強、グローバル展開を加速させたい考えだ。
ソニックスは、Android向けのオープンソースソフトウェアやライブラリを提供しており、Android開発コミュニティではよく知られた企業。今回の増資には、Android端末のUIテスト自動化サービス「Scirocco Cloud(シロッコ・クラウド)」が評価されたことが背景にあるようだ。
Scirocco Cloudの特長は、大きく2つに分けられる。まず、端末の実機を使ったUIテストを自動化できる点。そして、テストのための実機がクラウド上にある点だ。
UIテストの自動化だけであれば、ソニックスがオープンソースソフトウェアとして提供している「Scirocco」だけで実現できる。しかし、その場合、ユーザーは多数のAndroid端末を調達し、自身でひとつひとつテストする必要がある。
一方、Scirocco Cloudの場合、実機はソニックスが管理する特殊なサーバにUSB経由でつながっている。ユーザーはソニックスが用意した実機にネット経由で接続してテストを実行するため、調達の費用を削減することができる。また、一度作成したテストシナリオを他の端末にも適用できるため、同時に複数端末のテストを実行するなど、時間の削減にもつなげられる。テストが完了すると、画面のキャプチャイメージを含む詳細なレポートも発行される。
ソニックス代表取締役社長の吉澤武則氏は「実機での検証になるため、1つの端末を占有してテストすることになる」と述べる。つまり、端末Aがテスト中の場合、他のユーザーはAを使ってテストできなくなるのだ。こうした制限を突破するため、人気のAndroid端末は複数台を用意するなどして対応しているそうだ。
Android端末のテストUI自動化ツールをクラウドサービスとして提供している企業は、世界的に見てもまだ非常に少ないという。競合はPerfecto Mobileの「MobileCloud」と、Keynote Systemsの「DeviceAnywhere」と見ている。
「競合の2社は、まだグローバル展開ができていない。主要な国と地域の上位20機種をテストする環境を早期に作っていきたい」と吉澤氏は述べる。
今回得た資金もグローバル展開のために活用する。まずは開発者を10名程度、マーケティングを5名ほど増員する。さらに、年末までにはシンガポールと米西海岸に拠点を作り、グローバルにマーケティング活動を展開したい考えだ。
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