NHN Japanは6月20日、キュレーションサービス「NAVERまとめ」において、一部のまとめ記事をインセンティブ対象外にすることを発表した。1つのソースから情報を丸ごと転載したまとめや、検索結果をそのまま移しただけのまとめ、タイトルと無関係な内容のまとめといった「悪質性が高い」まとめが該当するという。
同社によれば、NAVERまとめについて権利者から権利侵害を指摘されたり、ユーザーから質の低いまとめに対して問題提起される機会が増えてきているそうだ。実際6月には、日刊サイゾーが掲載した記事を丸ごと転載し、段落ごとに見出しをつけただけのまとめ記事が掲載されるなどして、非難が集まっていた。このまとめは日刊サイゾー側の申し立てによって、すでに削除されている。
8月からは新たな奨励金制度も導入し、NAVERまとめの事業化に向けた取り組みを加速させていきたいとする同社だが、サービスの要とも言える“まとめの質”を今後どのように担保していくのか。NHN Japan 執行役員の島村武志氏に聞いた。
同社では、投稿されたまとめを24時間モニタリングする部隊を設けており、引用の範囲を超えているまとめについては、まとめ自体を削除したり、インセンティブの支払いを停止するなど、厳しい措置をとってきている。
これまでにも、たとえば記事を大きく4分割したうちの1つを引用するなどのケースは見られたが、今回の日刊サイゾーを情報ソースとしたまとめのように、記事を丸ごと転載したものは極めてまれなケースだという。しかし、改めて同社の運営ポリシーを明確にするきっかけになったと島村氏は語る。
たしかに、まとめ作成者としては、どこからがインセンティブの対象外になるのかという線引きは気になるところ。これについて島村氏は「アイデアをとらえて自分なりに情報を加味しているまとめは、やはり自分の言葉だったり解釈が含まれている。転載まとめは構成なども含めて写されている」と、質の高いまとめと悪質なまとめの違いについて説明する。
転載かどうかの見極めが難しいまとめについては、引用元となったコンテンツ事業者にも問い合わせる。「まとめ作成者を守るというよりは、基本的に権利者の主張を受け入れる。まとめ作成者はあくまでもコンテンツがあって、それを紹介する立場。権利者が紹介してほしくない形というのは、絶対に認めてはいけないというのが運営のポリシー」(島村氏)。
ところで最近では、掲示板サイト「2ちゃんねる」が、一部の2ちゃんねるまとめサイトについて、「刺激的な内容で広告収入を得ることを生業としている」として、転載を禁止したのも記憶に新しい。島村氏は、まとめにおける転載問題について、「どのプラットフォームというよりも使い方の部分。トラフィック至上主義ではないが、数さえ稼げればいいという論調が深くなりすぎることが問題を大きくする」と指摘する。
今後は、不正を働いてNAVERまとめでトラフィックを稼いでも「あまり意味のない世界観を作っていきたい」としており、8月から開始する「ロングヒッター奨励制度」もそのための取り組みの一環となる。「我々が奨励制度で数字だけを評価軸にしないで、しっかり人の目を入れて審査しているのは、不正をしても無意味だということ。機械で判別しているわけではないという抑止の意味もある」(島村氏)
すでにNAVERまとめへの引用を禁止しているメディアもあるそうだ。しかし、多くのメディアやコンテンツ事業者は、意図していない引用方法や、悪意のある引用を問題視しているのであり、「紹介されること自体はかまわないという事業者が圧倒的に多い」という。また詳細については明かされなかったが、現在コンテンツ事業者と新たなビジネス展開の可能性についても話し合いを進めているという。
島村氏は、NAVERまとめはまだ進化の過程にあると前置きしたうえで、「(コンテンツ事業者と)信頼関係を結べていない中で、まとめが少し一人歩きしている側面があることはよく理解しているし、そこは今後、本質的に解決しなければいけない問題だと思っている」とコメント。
従来は、“まとめ”という新たな価値を訴求し、サービスの認知を拡大させるフェーズだったとして、「やや行き過ぎたものが出てきたのは、サービスの価値が認められてきたことでもある。これからは第2のステージ。まとめ作成者だけがどうこうということではなく、ネット全体としてどのような取り組みができるかを考えていく」と語り、サービスのさらなる健全化に向けた施策を強化していくとした。
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