logo

空間情報科学と問われるモラル--「アナグラのうた」制作メンバーが語る - (page 3)

佐藤和也 (編集部)2012年07月17日 10時34分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

空間情報科学と問われるモラル

犬飼博士氏
犬飼博士氏

 トークの中では空間情報科学、そしてゲームの特性を取り入れる取り組みであるゲーミフィケーションについても触れられた。

 空間情報科学について黒川氏は「僕らはこれからあらゆる情報の波に乗って生活しなければいけない。ありとあらゆる情報のなかで、何をどう活かすのかということが、これから求められることなのかなと思います」と述べた。

 犬飼氏からは、日常の行動からゲームが刹那に起こっていることを説明するために作られた資料も公開された。単純に計画を立ててアナグラのうたを見に行くところから「行く」「行かない」というゲームをプレイしているというものだ。そしてゲームをプレイする中でメッセージを受け取って、その人の人生の経験として溶け込ませていくという。

  • 「プレイヤーはいかにしてアナグラをプレイするか」と題した資料

  • プレイヤーの体験を、未来館に行く計画を立てるところから順に説明

  • そのストーリーの中では、いたるところにゲームを発見しプレイしているのかを説明

 山下氏は「なんらかの数値やパラメータをなくしてゲームは成立しないと思うんですね。それで、今ITで何が起こっているかというと、GPSを含めていろんなセンサーが普及しだして、数値化されていってるんです。そうなると、人間はそこにゲームを見出してしまう。情報化社会のインターフェイスは、全てゲームといっても過言じゃないかなと思います」と見解を示した。

飯田和敏氏
飯田和敏氏

 たとえとして飯田氏はNike+(ナイキプラス)を例に挙げ「ランニングした距離を計るアプリですけど、これがセンサリングと数値の関係ですよね。その数字を見てもっと走ろうと思うこととか、数値が出るとゲームを見出してしまうというのは、こういうことだと思うんです」と述べ、続けて「おそらく100%スマートフォンを所有する時代がくるでしょう。そのときにあらゆるものがセンサリングされて数値化できます。そうなると全部がゲームになっちゃうんです。そのなかでコンテンツクリエイターが、必然性を持って遊んでもらうのは極めて難しくなる。普通に生きているだけでも、世の中が数値化されたら面白いじゃないですか」と語った。

 そしてここで大事になるのがモラルであるという。飯田氏は続けて「みんなの情報がまる分かり状態だと超面白いです。その超面白いものをいい方向に使うか悪い方向に使うかモラルが問われると思います。また、よりモラルが問われる時代になると、これまでは表現としてとらえられていたのが、これからはアルゴリズムとしてモラルが評価されるように思います。それをルールで制御することはできない。そこを数学的なアルゴリズムな考え方でとらえなおしていく、その先駆けとなることをゲームクリエイターがやっているんじゃないかなと思います」と述べた。

 またモラルに関しては人から強要されるものではなく、自発的に「やりたくない」と思うことであるとも付け加えた。その観点から考えると飯田氏は、現在でも「歌で幸せになれる」と言っていいのかは疑問に感じているという。「エンタテイメントの立場としては最高の表現を作り出せた展示になりましたが、そこで議論は終わりにしたくない。もう一度科学の立場から、人が幸せになるという状態を科学的に観察して定義してほしい」と語った。

 質疑応答の中で、センサリングや数値にような個人情報を取ることによって面白さが生まれるという一方で、個人情報を渡したくないというユーザーが多くいる現状もある。そのなかでクリエイターやサービスを作る側がモラルを持った物を作っていけば、個人情報を預けてもらえる時代になるかという質問があった。犬飼氏は現金と銀行を例に挙げ「銀行が無かった時代に、お金を人様にあずけるなんてとんでもないというときがあったはずなんです。そして銀行側は信用を作って築きあげていって、お金を銀行に預けられる時代になったと思います。これは個人情報に価値があって、それを人様に預けることに不安を感じるのと同じだと思います。いずれ、信用を築き上げて個人情報を預けられる時代は来ると思います」とした。

 なお、CEDEC2012では、「未来館常設展示『アナグラのうた』にみるゲーミフィケーションの事例」として、「情報科学とコンピューターゲームが協力して描きだした未来の『シアワセ』」と「インタラクティブセッション サウンド編」と題した2つセッションが用意され、今回の4人を含めた制作メンバーが、「アナグラのうた」について改めて語られることとなっている。

 また、「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾」では、毎回、異なったエンタテインメント系のテーマを取り上げ、関連するキーパーソンを招致してライブトークを行うとのこと、次回開催は8月末日の予定としている。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]