アップルの開発者向けカンファレンスWWDC 2012(Worldwide Developers Conference 2012)が米国サンフランシスコで11日(現地時間)から始まった。今回のWWDCのチケット(13万4800円)は1時間43分で売り切れたという。カンファレンスには60カ国の開発者が集まり、5日間に渡って112のセッションなどが開かれる。日本からも多くの開発者が参加している。筆者もiPhoneの登場から毎年参加しており、今年で5回目になる。
今回発表された詳細な内容は他の記事を参照していただき、iPhone発売当初からスマートフォンビジネスを行っている当事者として、アップルが打ち出した次の手をどう読み解けばよいのか。また、スマートフォンをはじめとするITビジネスを行なう上で何がキーになってくるのか。WWDCで唯一公開が許されるキーノートスピーチを生で見た筆者なりの考えをお伝えする。
伝説のカリスマ、スティーブ・ジョブスが亡くなって初めてのWWDCとなる。何が飛び出すか蓋を開けるまで分からなかった答えがひとつ、はっきりした。アップルは現在の路線を突き進む──ということだ。ユーザーがより良く利用できるようにコンピューティング機能を深く掘り下げ、ビジネス面では生態系と経済圏を拡大することが確実になった。そのターゲットが明確に示されたのだ。
キーワードは、モバイル、リビング、モビリティである。それは、コミュニケーションであり、チケットサービスなどのさまざまな生活シーンでの利便性であり、TVとの連携強化であり、自動車業界の攻略でもある。
今後、OS XとiOSともにアップデートされる。「Mountain Lion」と「iOS 6」だ。デスクトップOSとモバイルOSではあるが、相互に密接に関連し合い、ユーザーの利便性を追求した機能を提供することに腐心したOSで、その中心には「iCloud」がある。
iCloudを中心にデータをモバイルとデスクトップでシームレスに利用できるように環境を整え、メール、Twitter、Facebookといった新しいコミュニケーション手段やユーザー同士の情報共有機能をOSレベルで提供することで新しいアプリの登場を促し、ユーザー体験を豊かにする土台を開発者に提供した。
アップルからの開発者へのメッセージは明確だ。これらのAPIを利用し、ユーザーに新たな体験、新たな利便性を提供できるアプリを開発し、アップル生態系の中でWin-Winを実現しよう、ということだ。iCloudにデータが紐付けられれば、アップルプラットフォームやアップルのサービスから離れられない。コミュニケーションツールとしての機能や、サーバ設備や管理などもOSの機能に取り込まれ、仮想化される。開発者はアプリ機能としての最上層部だけの開発と事業提供に注力できるのだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス