テックウインドは、米国Scosche Industries(スコーシェインダストリーズ)製の据え置き型放射線カウンター「HRDTX」が、福島県相馬市のリアルタイム線量測定プログラムに採用されたと発表した。これを受け、現地での測定状況や今回の活用事例などについて説明会を開催した。
HRDTXは、コンセントに接続して使用する据え置き型の放射線測定機だ。Wi-Fi接続により、計測した放射線量を電子メールを使って登録したPCやスマートフォンに転送ができるという特長を持つ。
相馬市には、HRDTX100台を納入。計測された放射線量は3G回線を通じてクラウド上にあるサーバに集約され、データとしてグラフ化される。納入にあたっては製品開発を手がけるScosche、国内販売店のテックウインド、3G回線を提供する丸紅無線、サーバ管理をするLINDOCの4者が協力した。
設置されたのは、相馬市の西側に位置する玉野地区。福島第一原発から直線距離にして約45kmの場所だ。2011年10月から3カ月にわたって、乳幼児、妊婦、小中学生4010人を対象に相馬市が実施したガラスバッジテストの結果、比較的線量の高かった地域だという。
導入にあたっては、相馬市の健康対策専門部会で委員を務める東京大学物理学専攻教授の早野龍五氏が協力。テックウインドを始めとする4者と測定精度や設置方法について話し合いを重ねてきた。
100台のうち、25台は通学路や農地などの屋外に設置し、残りの75台は屋内用となる。屋内用は学校の教室や廊下に設置されたほか、一般家庭にも導入される予定。すでに22~23台が稼働済みだ。
屋外用では電源が必要になるため、ソーラーパネルと蓄電池を組み合わせた独自の設置システムを用意。実際に福島の天候を加味し、日照時間が短くなる冬でも稼働できるよう調整を加えたという。こちらの設置システムにおいてもScoscheが製品開発をした。
早野氏は「HRDTXはWi-Fi、3G回線を使って放射線量を毎時自動収集できる。相馬市の放射線対策室では常時グラフを見ながら、玉野地区の放射線量を確認可能だ。市役所と玉野地区は車で一時間程度離れているため、サーバ上で確認できるのはメリットがある」と話す。ただし、今回の導入にあたって、製品仕様を変更した部分もあるという。
「本体には放射線量が表示されるモニタが設置されておらず、LEDの色で確認する形状になっていた。正確な数値はスマートフォンやPCに通知されるので、十分だと考えられていた。しかし現地に赴いてみると通信環境が不安定だったり、携帯電話やスマートフォンを全員が持っているとは限らず、本体で放射線量の数値を確認できる必要が生じた。それを受け、モニタ表示をつけた形へと大急ぎで作り直してもらった」とのことだ。
相馬市では、リアルタイム線量測定プログラムの運用、評価をしていくほか、結果を見ながら除染などに取り組むとのこと。テックウインドでは、相馬市以外の自治体への設置などを検討していくという。HRDTXは5月末から6月にかけて一般家庭用としても販売開始される。
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