ソニーは、4月1日に代表執行役社長兼CEOに就任した平井一夫氏出席の下、新経営方針説明会を開催した。会見冒頭に「ソニーが変わるのは今しかない」と力強く宣言した平井社長は、デジタルイメージングなどコア事業の強化やテレビ事業の再建などについて施策を話した。
平井社長は経営方針説明の前に、2011年度の業績が最終損益5200億円の赤字見通しという状況について「CEOとして重く受け止めている。それと同時に必ずやソニーを変革し再生することを改めて決意している次第。ソニーが変わるのは今しかない。ソニーを変える。ソニーは変わる。私は本気で全力で、社員一丸となって変えていく」と表明した。
「この厳しい状況からソニーをいかに変え、成長させるか、その経営方針を説明する」としてスタートした説明会では、エンタテインメント、エレクトロニクス、金融という3つの事業を挙げ「グループ全体の最優先課題であるエレクトロニクス事業の立て直し、再生から成長へと転換することが私に与えられた最大の責務」とする。
重点施策として挙げられたのは
の5つ。中でもコア事業の強化とテレビ事業の再建は「直近の課題」と位置付ける。
コア事業に据えるのはデジタルイメージング、ゲーム、モバイルの3つ。重点事業領域とし、投資・技術開発を集中することで、2014年度にはエレクトロニクス事業における売上の70%、営業利益の85%の創出を目指す。
デジタルイメージング事業は、民生用機器、業務用機器、イメージセンサやレンズなど、3つの事業領域を合わせた新枠組みで展開する。独自技術であるイメージセンサやレンズ、信号処理技術などをスマートフォンなどへの製品に取り入れるほか、セキュリティカメラやメディカルなど業務用に展開することで、商品の差異化、収益の拡大を狙う。平井氏は「(新体制にしたことで)効率的なオペレーションで競争力ある商品を生み出すことが可能になる」とした。
ゲーム事業では「発売から6年目、まさしく収穫期にある」という「PlayStation 3」(PS3)と、発売以降好調に推移している「PlayStation Vita」(PS Vita)、新興国で需要の高い「プレイステーションポータブル」(PSP)の3つのプラットフォームで利益を創出するとのこと。さらに「PlayStation Network」など、ネットワークサービスにおいては、ダウンロードタイトルの拡大、定額課金サービスの強化などを実施し、2014年度には売上高1兆円、営業利益率8%を目標に据える。
平井氏は「ゲーム事業は、ソーシャルゲームなどの台頭により事業モデルが変化している。環境が変化する中でも市場環境やニーズを見極め、没入感のあるエンタテインメント体験を提供し続ける」と事業方針を定めている。
100%子会社となったソニーモバイルコミュニケーションズが手掛けるモバイル事業においては、スマートフォンの強化と経営スピードを向上することで、収益改善を狙う。リードタイムを従来の半分以下に短縮すること「Xperia」「VAIO」「Sony Tablet」の融合を加速し、商品力を強化することなども明らかにした。
「コンシューマ商品のネットワーク対応を進めているソニーにとって、スマートフォンはまさにハブとなる商品。高速化やクラウド化が進めば重要性はさらに高まってくる。ハードウェア販売に止まらないビジネスモデルの構築も可能」と意気込みを見せた。
すでに2011年11月から収益改善プランに取り組む液晶テレビ事業は、2013年度の黒字化に向け、固定費、オペレーションコストなどを削減し、再建を目指す。モデル数は2011年度と比較し、40%の削減を実施。それと平行して今後の成長のため、有機EL、Crystal LEDなどの次世代ディスプレイにも取り組む。次世代ディスプレイについては「協業も視野に入れる」としたが、具体的な協業先などは明かされなかった。
テレビ事業は長く低迷が続き、赤字に苦しむ事業。しかし、平井氏は「テレビはありとあらゆるコンテンツをお届けできる一番大事な商品。強い信念を持って取り組んでいく」とテレビ事業に対する思いを話した。
新規事業の創出として期待されるメディカル事業は、2014年度に売上高500億円を見込む。イメージセンサーやレンズ、画像処理技術など、ソニーの強みである技術を開発して内視鏡などの医療機器向けビジネスを拡大するほか、「iCy」「Micronics」という関連企業の買収も完了しているとのこと。「将来的には1000億円の売上も目指す」とした。
「ソニーが高収益体質になるため、事業の集中と選択を加速し、投資を強化するのはデジタルイメージング、ゲーム、モバイルと、新規領域のメディカル事業。そのほかの領域においては、コア事業とのシナジー効果が少ないこと、製品のコモディティ化が進み成長が見込めないこと、単独より提携の方が成長の可能性が高いこと、などから事業性を判断する」と平井氏は説明する。
すでに中小型液晶事業では社外に事業譲渡を実施しており、電気自動車用、蓄電用の電池事業も他社との提携を検討しているとのこと。こうした事業ポートフォリオの組み替えを実施し、本社組織、事業子会社、販売体制の再構築に取り組み健全な経営を図っていくという。
これらの取り組みにより、2012年度は約1万人の人員減、構造改革費用は約750億円を計上する見込みだ。
平井氏は経営方針説明を終えた後「これらの施策をご評価いただくには一つ一つ確実に実績を積み重ねていくしかない。すべてはこれからのソニー社員一人一人の実行力にかかっている。ソニーが再生、成長する過程には避けて通れない痛みを伴う選択や判断、実行を要する場面にも直面すると思う。しかしそれに臆していてはソニーを変えることはできない」と話す。
続けて「事業経営のスピードを上げ、事業ポートフォリオを変革し、イノベーションを起こす。そしてこれから世界中の人々の好奇心を刺激し、お客様に感動していただける商品をサービスを提供する会社になること。それがソニーとして目指すゴール」と定めた。
ソニーグループ全体で2014年度には売上高8兆5000億円、営業利益率5%以上、ROE10%とし、エレクトロニクス事業では売上高6兆円、営業利益率5%を目標に据えている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス