「それは基本的には海図上に引かれる線で、その線の内側に氷があることを示している。したがって、線の外側にとどまっていれば、安全が確保されるはずだ。モントリオールを出港してドイツへ向かう船舶の場合、(そうした警告を)確認して、氷山の危険に近づくよりもかなり前から航路の計画を立てることができる」(Hicks氏)
同氏は、日々の警告を活用している船舶の割合を正確には把握していないものの、「大多数」が利用しており、例外に当たるのは、近道の航路を進もうとする、あるいは危険な海域の航行を強いられる作業を実行する船舶だと述べる。同氏は、警告に留意しなかった船舶が小さな氷山に衝突した2010年の事故の例を挙げた。その事故で死者は出なかったものの、同船のバルバスバウは陥没し、乾ドックでの大規模な補修を余儀なくされた。
2007年11月24日には、別の船舶の「MV Explorer」が南極半島沖で海中に隠れた氷山に激突した。この激突で、「こぶし大」の穴ができた同船は、最終的に船員の避難を余儀なくされ、沈んでいった。この事故で死者は出なかった。
しかし、Hicks氏と、コロラド大学の米国立雪氷データセンター(National Snow and Ice Data Center:NSIDC)でリードサイエンティストを務めるTed Scambos氏の両者は、これらの事件は極めてまれな例外であると説明した。重要な航路にある氷山を監視する継続的な国際活動と、そうした海域に近づこうとしている船員に最新データを提供する取り組みが、事故防止の大きな要因となっている。
地球の気候変動が原因で、グリーンランドのような場所では氷山が割れることが増えており、氷山はほぼ間違いなく、1世紀前より増加している。この証拠に異議を唱えるのは難しい。
しかし、Hicks氏によると、このことは北大西洋を航行する船舶が直面する危険とは全く関係がないという。
例えば、Titanic自体、運命の衝突事故を起こしたのはロードアイランド州プロビデンスの東の海上で、氷山が最も多い海域から遠く離れていたと同氏は述べた。さらにその海域では、海流や、冷たいラブラドル海流と暖かいメキシコ湾流の衝突によって氷山の出現が左右される。これは地球の気候変動に関係なく、毎年大幅に変化する。
グリーンランドから漂流する氷山の数は増えているかもしれないが、Scambos氏によれば、航路に向かって南に流れるほぼすべての氷山は、人々を危険に陥れるずっと前に溶けてなくなってしまうという。
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