船舶修理施設のBAE Systems San Francisco Ship Repairは、環境に配慮した技術の最先端の実験が行われているような場所には見えない。
古い施設のいくつかは1880年代に建てられ、窓ガラスもところどころ割れている。フォークリフトと港湾労働者が船荷をあちこちに運ぶ。空気中には化学薬品のにおいが漂う。そして、地面のいたるところで、「グリット」という細かな黒い砂がわだちや山を作っているが、これは施設を通過する多数の船体の清掃で行われた、サンドブラスティング(砂を吹きつける作業)の名残だ。
ヒ素、有毒物質、固形化した塗料、重金属がたくさん入ったグリットをなくすことが、この施設の重要な目標だ。BAE Systemsは、平方インチ当たり4万2000ポンド(平方m当たり約3000万kg)以上の圧力で水を船体に吹きつけるEcosphere Technologies製のロボット「M3500」を利用している。この水圧で金属製の船体を華氏185度(摂氏約85度)に熱して、表面を殺菌するとともに、腐食の原因となる塩も除去する。
M3500は、清掃で出た水と塗料が混じったスラッジ(泥状の廃棄物)を、内蔵の廃棄ユニットに吸い込む。サンフランシスコにあるBAE Systemsの施設でゼネラルマネージャーを務めるIra Maybaum氏によると、8万2000平方フィート(約7600平方m)の塗料面を除去すると、約1万ガロン(約3万8000リットル)の処理可能な水と1800ガロン(約6800リットル)の固形化した塗料が出て、有害廃棄物処理センターに運ぶ必要があるという。
一方、従来のサンドブラスティングでは、500トンから600トンの汚染されたグリットが出て、一部は回収されるが、一部は造船所周辺や修理に来ている船の中に散乱することになる。
「単純に埋め立て地に運ぶわけにはいかない。(M3500の方法とは)大きくかけ離れている。グリットは塗料を除去するには効率的だが、環境への配慮という点では問題がある」(Maybaum氏)
環境被害はクリーンテクノロジ市場において人目を引く華々しい分野ではないかもしれないが、ここには大きなチャンスがあると、フロリダ州スチュアートに本拠を置くEcosphere Technologiesの最高経営責任者(CEO)、Dennis McGuire氏は断言する。同社は、高圧水噴射装置を考案し、特許を所有している。
McGuire氏によると、「世界には9万隻の船があり、毎年船体の洗浄のために陸に上がってくる」という。磨いたり再塗装したりする必要のある船体の表面積は、1隻あたり平均でおよそ20万平方フィート(およそ1万8600平方m)になると同氏は説明する。
Ecosphere Technologiesが環境に優しい企業に変貌したのは、どちらかと言えば偶然だった。20年ほど前、McGuire氏は船体の塗装をはがすための高圧ホースを開発した。性能は抜群だったが、スラッジが海水に直接流れ込むため、米環境保護庁(EPA)に大きく問題視された。
「船舶用塗料は地球上で最も有毒な物質の一つだ。ヒ素や鉛が含まれているため、接触した海洋生物を殺してしまう」とMcGuire氏は語る。
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