シャープは、3月27日に発表した台湾・鴻海グループとの業務提携を受け、記者会見を開催した。会見には4月1日付けで社長に就任する奥田隆司氏が登場し、提携に至る背景や世界で戦う仕組み作りについて話した。
「シャープにはオンリーワンのデバイス、商品を開発する技術力があるが、ここ数年は円高、あるいは六重苦という経営環境の中、新しいビジネスや市場に対応するスピードが不足し、強みを発揮することができなかった」と奥田氏は、ここ数年の経営環境を振り返る。
シャープは現在、多くの製品において研究開発から、設計、生産、調達、販売、サービスのすべてを手がけている。中でも主力となる液晶事業においては、パネルの生産から液晶テレビの販売までを垂直統合型ビジネスとして展開してきた。しかし奥田氏は「競争環境がグローバル化し大変厳しい市場。シャープ単独での垂直統合では限界があった」と言う。
今回の業務提携は、シャープのオンリーワンデバイスや商品の開発力と鴻海が持つ生産技術、加工技術を融合させ、スケールメリットとコスト競争力を持つことが狙い。奥田氏は「両社の強みをいかしたグローバルレベルの戦略的垂直統合モデルを一緒に創り上げることで魅力的なデバイスや商品をタイムリーに市場投入できると考えている」と期待を寄せる。
大きなメリットの一つとなるのは大阪・堺工場の操業安定化。鴻海精密工業は、シャープディスプレイプロダクト(SDP)が生産する液晶パネル、モジュールを最終的に50%まで引き取るとしており「安定操業が維持できる見通し」(奥田氏)という。さらに「両社のスケールメリットをいかし、主要部材の安定調達、ワンカンパニーとしての事業分業によってコストダウンが期待できる」と続ける。
堺工場は60型で8枚、70型でも6枚がとれる第10世代のマザーガラスを生産しており、大型液晶パネルを生産できることが強み。「鴻海グループが受託生産をしているテレビメーカーに向けても大型サイズのテレビを提供できることになる。この分野でも強みをいかす取り組みを加速化させていきたい」と奥田氏は言う。
「エレクトロニクスの事業環境はデジタル化の進展とグローバルレベルでの競争激化、売価下落と厳しい環境にある。この対応として、同業種あるいは業態の近い企業間での連携が多くされている。シャープでは国籍や業態という枠の中にとどまることなく、お互いの強みでしっかり補完しあい、グローバルで成功しあえる関係で協業をしていきたい。1+1が3、あるいは5になるシナジー効果を生み出すことが協業の要」と、業務提携の狙いを話す。
液晶テレビに限らず携帯電話などのモバイル端末においても「鴻海グループと共同共通設計、あるいは同じ工場を使い生産を効率化することで、生産規模によるスケールメリットから大幅なコストダウン、販売量の拡大を進めていく」と幅広い分野で協業していく姿勢を見せた。
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