「まさに念願がかなった!今夜は酒が旨い」--ソフトバンクモバイル代表取締役社長の孫正義氏は3月1日、プラチナバンドの割り当てが同社に決定した喜びをこのように語った。ソフトバンクは1月27日に、900MHz帯を使用する特定基地局の開設計画を総務省に申請。3月1日に総務大臣より同開設計画の認定を受けた。7月25日より900MHz帯を使用した通信サービスを開始する予定だ。
900MHz帯は、障害物などがあっても電波が届きやすく屋内でもつながりやすい“プラチナバンド”と呼ばれている。NTTドコモとKDDIはすでに異なるプラチナバンドを割り当てられており、大手通信3社では唯一ソフトバンクだけが割り当てられていない状況だった。「800MHz帯のプラチナバンドを得るために総務省を相手に訴訟まで起こして大騒ぎをした。それからもう8年が経った。我々にとって長い道のりだったが、やっと念願叶ってついにプラチナバンドの認可を得ることができた」(孫氏)
孫氏は、これまでのネットワーク満足度向上に向けた取り組みを説明。2009年度に6万5000局だった基地局数を2011年度には3倍の18万局に増設したほか、Wi-FiスポットのアクセスポイントもNTTドコモの約8100箇所、KDDIの約7万箇所をはるかに超える24万箇所を設置した。しかし、それでも「電波が悪い」ことを理由に解約するユーザーが圧倒的に多かったという。
「言い訳がましくなるので言いたくなかったが、これだけ基地局を持ってもつながらないのは、どう考えても不平等な戦いを強いられてきたから。これは事実だから事実と申し上げている。プラチナバンドの欠如は我々にとって最大の弱点だった。しかし、ついに今日900MHz帯の認可をいただいた。これからはいよいよ言い訳はできない。プラチナバンドでやっと同じ武器を得た。我々の方がもともと基地局の数は多い。そこにより電波の届くプラチナバンドを得たならば、いずれ主要なところに追いつき、あるいは追い越す」(孫氏)
電波監理審議会による審査では、イー・アクセスとソフトバンクの2社が優位となっており、契約数の多さがソフトバンクへの割り当ての決め手となった。孫氏は「プラチナバンドの許認可が得られるかどうかはギリギリまで分からなかった。審査の結果では10点満点中9点が我々で8点がイー・モバイルであった。それを聞いてゾッとした。もし負けていたらいまごろこの笑顔も泣きっ面になっていた」と振り返った。
現在発売している端末では、「iPhone 4」「iPhone 4S」「iPad 2」などが900MHz帯に対応したチップセットを搭載しており、7月25日から開始する900MHz帯通信サービスもそのまま利用できる。また、3月に発売予定の「PANTONE 4 105SH」および夏モデルとして発売するすべての端末が900MHz帯に対応する予定だという。
一方で、iPhone 3GとiPhone 3GSは同チップセットを搭載しておらず900MHz帯に対応していないことから、電波を改善することができない。孫氏は、2011年10月に実施した、iPhone 3G/3GSからiPhone 4/4Sへの機種変更者に対する「実質無償機種変更キャンペーン」は、900MHz帯に対応した端末へ移行してもらう目的もあったことを明かした。
認定された特定基地局の開設計画では、2012年度中に約1万6000局を設置し、2016年度には約4万1000局まで増設。人口カバー率も99.9%にする予定。ソフトバンクは連結設備投資額を2年間で1兆円としていたが、今回の認定にともない1000億円を積み増しする。2013年度には4500億円の設備投資を計画し、3年間合計(2011年度~13年度)で1.55兆円にする予定だ。
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