では実際にMIPS搭載Androidはどれほどの完成度なのだろうか?詳細はこちらの記事を見ていただくとして、CPUが違っても動くということは、同一のゲームパッケージがPlayStation 3とWiiの両方で遊べることに近い。Androidが各種CPUで動作し始めた現在、Android、iOS、Windows Phoneの未来はどうなっていくのか予測して記事を締めくくりたいと思う。
【iOS】
iPhone 4SとiPad 2にはA5プロセッサが搭載されている。これはApple自社設計のiOS向けSoCで、ARMベースである。当面はこのラインが進化していくと予測するのが妥当だが、iOSはMac OS Xのサブセットであり、Mac OS Xは現在Intel CPUに最適化されている。どこかの時点でAppleがIntel CPUに路線変更したとしても不思議ではない。しかし、iOS端末がApple以外のベンダーから登場することはまずないだろう。マルチベンダー展開が期待できない以上、異なるCPUアーキテクチャに対応したところでマルチアーキテクチャを語る意味は薄い。
【Windows Phone】
Windows Phoneは現状ARM CPUのものしか登場していないが、内部的にはIntel CPUにも対応している可能性が高い。Windows PhoneはWindows CEを源流に持ち、さらにその源流はWindows NTである。PC向けOSのWindows 8がARM対応を表明しているのと逆の形がありうるということだ。Windows 8は革新的OSに違いなく、またWindows Phoneと同じメトロUIを備える。だがここには根深い問題がある。Windows PhoneとWindows 8は親和性の高い組み合わせであるものの、まったく別のOSであるということだ。Windows 8が搭載されたスマートフォンの登場の可能性はないわけではないが、Windows Phoneが搭載されたPCは登場しないであろう。
【Android】
前述の実機レビューの通り、AndroidのMIPS対応は不完全だ。だがこれは大きな問題ではない。Androidの開発スピードは恐るべきものであり、OSレベルでの対応も驚異的なスピードで進んでいる。アプリレベルでの対応も今後容易になっていくであろうことは想像に難くない。Intel CPUについても同様だ。
ここで少し話を脱線させよう。ここ十数年間、家電量販店のPC売り場で、WindowsとMac OS以外のOSが搭載されたPCを目にしたことがあるだろうか? 極めてニッチなものを除き、そんな経験はないはずだ。しかし現在、Androidタブレットが普及するにつれ、家電量販店ではタブレットPCコーナーがあるのが当たり前になっている。そこには一見するとノートPCにしか見えないASUSのEee Pad Transformerや、Eee Pad Slider、またNECのLifeTouch Noteなどが置かれている。
Android 3.2から、USBホスト機能が標準装備され、キーボードやマウスを繋げばノートPC的な使い方が可能となっている。この流れが進化すれば、ネットブック程度の価格か、さらに安価なAndroid PCとでも呼べるものが登場するのは時間の問題だ。
誰もがPCで複雑な表計算や、資料の作成、作曲、CG作成などをするわけではない。そもそもネットブックでさえそのような用途は敬遠されているのだ。しかも、Androidスマートフォンは爆発的に普及している。そのユーザは、Androidスマートフォンで購入したアプリを、タブレットやノート型端末で追加料金を払うことなく利用できる。
ここにIntelやMIPSの後押しが加われば、家電量販店でAndroid PCコーナーが設置される未来もあながち夢ではない。スマートフォンやタブレットPC市場は今も昔も混沌としている。しかし、ドラスティックな変化は混沌からしか産まれないのである。
【著者】工藤友資
アット・イー・デザイン 取締役/CIO
1976年11月20日生まれ、東京都出身。ライターも兼業。人工知能の開発をライフワークとする。国産初のRSSアグリゲーター「RabbitTicker」を企画開発。「BlogPet」を企画開発。2004年、「BlogPet」にて「Internet magazine」のウェブサービスアワード ブログ関連サービス部門で最優秀賞を受賞。自然言語処理エンジン「JackalopeEngine」*特許第4677051号「会話システム及び会話文章処理方法」等の特許を取得。問い合わせはkudo@bingalab.orgまで。
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