反対意見を述べるとしよう。
Jerry Yang氏が自ら創設した企業との間に残されていた関係を絶った今、Yang氏が米Yahooに残したものを振り返るニュースメディアの記事が、とりわけ好意的なものになることはないだろう。Yang氏は常に、YahooをMicrosoftに470億ドル超で売却する機会をふいにしたとして非難されることになりそうだ。批評家はこう言うだろう。Yang氏はその相当な才能のために、当時あらゆる要素が「売却」という方向を示していたにもかかわらず、Yahooを手放すことが感情的にできなかったことで、近年で最大のビジネスチャンスの1つを台無しにしたと。
もちろん、すべて本当のことだ。今だからこそ、この売却の話がどのような展開になったか分かっている。しかし、そういった見方は同時に、あまりに独りよがりで、あまりにも不公平だ。また、ニュアンスの欠如は、Yang氏本人と同氏の貢献についての間違った評価を生み出す。Yang氏が長くとどまりすぎたのは、同氏自身のために良くなかったのだろうか。これは主観的な質問だが、公平を期すために言えば、テクノロジ業界で成功してから、まだ会社が好調なうちにそこを離れた起業家は一握りしかいない。その少ない人々のなかで最初に名前が挙がるのがBill Gates氏だ。ほかの大物では、パーソナルコンピュータの販売方法を根本的に変えたMichael Dell氏がいる(ただし、Dell氏はその後、最高経営責任者(CEO)に復帰している)。筆者としては、Lotusの創設者であるMitch Kapor氏も加えたい。Kapor氏は、「Lotus 1-2-3」でビジネスの世界でのスプレッドシート計算の方法に革命をもたらし、その後Jim Manzi氏に権限を譲っている。
Yang氏が短い期間で辞めなかったことは評価されるべきだ。あまりに常識がなくて、だまされるのも気づいていないような人々に、未熟な企業を転売するのが野心だとされた時代に、Yang氏は長期にわたってYahooにいた。われわれは失脚した英雄に優しくないとはいえ、これは米国の偉大なサクセスストーリーであり、1995年にまでさかのぼるこれまでの功績を、われわれは考慮するべきだ。Yang氏の残したものに、Microsoftとの取引に失敗したことを含めるのなら、世界最大級のインターネット企業を構築する取り組みの中での、Yang氏の数え切れない貢献も含めようではないか。どんな欠点をあげつらったとしても、Yahooはやはり、ドットコムバブルの崩壊や、米国同時多発テロ後の低迷期、さらに世界同時不況を乗り越えた企業だ。同じことを言える企業がほかにどのくらいあるだろうか。Yahooは、いつも順調というわけではなかったが、テクノロジ業界の状況が根本的に変わり、GoogleやFacebook、Twitterのような企業がインターネットの新しい主役となっても、なんとか生き延びてきた。
Yang氏はかつて、名前の前に必ず「インターネットの草分け」という言葉が付けられる、数少ない人々の1人だった。まさにその通りだ。当時、Yahooが提供していたインターネット上での情報検索方法は、AltaVistaのような競合の検索エンジンよりもずっと先を行っていた。それがスタートだった。Yang氏と共同創設者のDavid Filo氏は、そうしたインターネットの入り口としてのメリットを活用して、さまざまなサービスでその若い企業を大きくしていった(これを、Sergey Brin氏とLarry Page氏が約10年後にGoogleで模倣することになる)。
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