2010年10月から始まった復調相場の勢いを駆って上昇基調で始まった2011年の新興市場だったが、インターネットベンチャー企業の株価は3月11日に発生した東日本大震災によって大きく崩れた。リスク許容度の低下にともなって投資家は値動きの激しいネット株を避け、年末まで資金の流出に苦しんだ。一方で復活の年となるはずだったIPO(株式新規上場・公開)マーケットも大震災の影響を多大に受け、上場延期が続出した。歴史的な低水準となった2009年、2010年に比べれば増加したものの、事前の見込みを大幅に下回ってしまった。
「Ameba」などを展開するサイバーエージェントや衣料品通販サイト「ZOZO TOWN」のスタートトゥデイなどのネット株が多く上場する東証マザーズ指数は2011年年初、430ポイント台から始まり3月には520ポイント台まで上昇。しかしその後に大震災を受けて瞬間的に350ポイント台まで急落した。一時は業績面に影響が乏しいセクターとして資金の逃避先となる場面もあったが、大震災とその後の原子力発電所事故の実態経済に与えた影響は大きく、夏場以降は下値を模索する展開に入ってしまった。
個別企業では2010年末、強制捜査を受けて企業イメージを著しく悪化させてしまった「Mobage」のディー・エヌ・エー(DeNA)が2011年、良い意味でも悪い意味でも、もっともインパクトのある話題を振りまいた。震災後も業績好調、海外ファンドによる継続的な資金流入によってグリーとともに相場の主役となっていたが、10月末に2012年3月期第2四半期(4~9月)決算を発表。7~9月の業績が4~6月比で減益となり、成長期待が一気にはげ落ちた。DeNAの株価は急落し、その他のソーシャルゲーム関連株にも売りが波及。ネット株は「DeNAショック」に見舞われてしまった。主役を失ったネット株相場はDeNAの株価と同様に停滞色を強めていった。
物色テーマはソーシャルゲーム関連が中心だったが、シナジーマーケティングやネットイヤーグループなどクラウドコンピューティング関連銘柄や、相次ぐ官公庁や大手民間企業へのサイバー攻撃発生を受けてネットセキュリティ関連銘柄も人気化。アズジェントやラックホールディングスなどが大幅高となる場面があった。
IPOマーケットに目を移すと、その様相はまさに波乱万丈だった。第1号上場案件となったのは、乗り換え情報提供などを提供する駅探。同社を先頭に、2009年、2010年を上回るペースで始まったが、3月11日の東日本大震災発生を受けて上場延期が続出。水面下で上場を準備していたベンチャー企業も様子見となったようで、上場銘柄数は2010年の22社からは増加したものの、事前に想定された50社程度を下回り36社にとどまった。7月には画像処理ソフトのモルフォ、9月には大容量データ分析のブレインパッド、ソーシャルゲーム開発のKLab、10月には電子書籍販売のイーブックイニシアティブジャパンなど有望ベンチャーが登場。
銘柄数は事前の予想を下回ったが、第一生命保険や大塚ホールディングスなど大物企業が上場した2010年と比べるとベンチャー企業の質は上昇。2011年のIPOマーケットを締めくくる大物案件として12月、オンラインゲームのネクソンが登場した。市場からの吸収金額が約1000億円、時価総額も約6000億円と2011年最大の規模。しかし上場前に個人情報流出が明らかになり、それを押し切って上場したため株式市場の評価が急降下。初値は公開価格1300円に対し1307円と小幅高にとどまり、初値形成後は売り先行。出来高も縮小し、早くも株式市場における存在感を低下させてしまっている。
年末年始の主役へのとの期待の高かったネクソンの失速、また既存市場でもソーシャルゲーム関連企業間での著作権侵害闘争が多発しており、ネット企業への投資意欲は減退気味にある。2011年はクックパッドやボルテージなどが新興市場を卒業。足元の状況は芳しくないが有力企業のIPOは増加しており、これは2012年も継続するとみられている。2012年こそ、ネット株にとって復調の年となることを期待したい。
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