検索の世界のルールを変える可能性を秘めた「Siri」--アップルの次の一手は? - (page 3)

Jason Hiner (TechRepublic) 翻訳校正: 石橋啓一郎 編集部2011年12月16日 07時45分

自前で構築する

 Siri自体はもともと検索エンジンのようなところもあるし、検索はすべてSiriを介してAppleのサーバを通るのだから、ユーザーの音声検索利用に関する大量なデータがAppleにはある。さらに、Siriのデータはすべて特定のユーザーに結びつけられており、将来的にはAppleが検索をパーソナライズする道も十分開かれている。

 2010年のD8カンファレンスでは、AppleがSiriを買収して検索事業に参入するのかとの問いに対し、Steve Jobs氏は「Siriは検索の会社ではない。人工知能の会社だ。Appleが検索事業に参入する計画はない。われわれは検索には関心がないし、他の人たちがしっかりやると思っている」

 後にAppleが実行したことをある時点では否定する発言をJobsがしていたのはよく知られており、そうした例も多い。しかし、買収で獲得したSiri事業の主要人材をもとに検索エンジンをゼロから作るとは考えにくい。それには何年もの時間と多大なリソースが必要になるだろう。MicrosoftがBingを作り上げるのに投じた金額を考えてみるといい。それでも成果はほどほどだし、早期に収益化する見込みはない。

買収する

 Appleにとって速い方法は、比較的小規模なウェブ検索企業を1社買収してSiriチームに統合し、その企業のリソースの大半をSiriにフィードするVUIのカスタマイズに充てることだろう。買収候補として悪くない企業はいくつかある。BlekkoやDuckDuckGo、Yippy、Dogpile、それから懐かしのAskJeevesだってある。

 Appleには手元現金が800億ドル近くあり、上記検索企業のどれを買収するにも十分な資金力がある。最良の選択肢はDuckDuckGoとBlekkoになりそうだ。ともに複数の分野でGoogle以上の成果をあげているが、規模が小さいため、大きな注目の的にはなっていない。

提携する

 Appleが検索分野で他社と提携することがあれば、相手はGoogleかMicrosoft Bing、そうでなければYahoo(自前の検索はほぼ捨ててBingに切り替えているが)に絞られるはずだ。Googleは間違いなく「ノー」だ。Googleはモバイル分野でAppleの宿敵だからだ。Bingは短期的には意味がありそうに思える。MicrosoftはBingを検索エンジンというよりは「意思決定エンジン」だと謳っており、Siriがやろうとしていることと非常に相性がよい。

 だが、MicrosoftはWindows PhoneでSiriと同じようなことをしたくなる定めにある。Appleからすれば、それはMicrosoftと組むという選択肢に寄りつかない十分な理由になるだろう。

まとめ

 AppleがSiriを提供したことで、検索のストレスが下がり、検索はすばらしい経験に生まれ変わった。しかし、それを次のレベルに進めるには、今以上に緊密にウェブ検索と統合する必要がある。検索エンジンを自前で構築するのは時間がかかりすぎるし、検索分野で提携するにも、有望な選択肢はあまりない。したがって、最も現実的なシナリオは、小規模な検索企業を買収し、Siriに統合することだ。

 Appleの全プロダクトラインのなかでもSiriのポテンシャルは非常に高い。2013年末までには、Siriが大半のiOSデバイスやMacintoshコンピュータに搭載されると筆者は予想する。コラムニストNick Bilton氏はSiriについて、Steve Jobsがテレビに導入しようとしていた革命的インターフェースだと考えている。

 Appleが検索分野に本格的に参入するかどうかがより多くの人の関心を集め、話題になれば、Appleは堂々とSiriをウェブ上に無料で公開してGoogleと直接対決するのだろうか。Appleがハードウェアとソフトウェアの融合を重視している点を考慮すると、筆者はそうなるとは思わない。それでも、今後を考えるのは楽しいことだ。Appleが世に送り出したVUIは、おそらくここ10年で最も重要な検索の新開発なのだから。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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