ニューヨーク発--われわれが「iTunes」や「Android」、Facebookなどのアプリケーションプラットフォームに慣れてしまったからだろうか。Spotifyが米国時間11月30日に行った、同社もそうしたプラットフォームを構築するという発表は、それほど鮮烈な印象を与えるものではない。
あるいはそれは、当地で30日に開催の記者会見において同社がデモをした新しいアプリケーションに、あまり新しいところがないからだろうか。Spotifyの最高経営責任者(CEO)で共同創設者のDaniel Ek氏に、新しいアプリケーションプラットフォーム以外、発表することがほとんどなかった点も良くなかった。うわさになっていたダウンロードストアや動画サービスの発表がなかっただけでなく、アプリケーションプラットフォームについてのニュースのほとんどは、この1カ月でリークされていた内容だった。
Spotifyは、世界中に1000万人以上のアクティブユーザーを持つ、最大の音楽サブスクリプションサービスだ。そのSpotifyが新たに開発者向けプラットフォームを公開するという報道は、Spotifyが開発者に同サービス向けアプリケーションの構築と販売を許可する計画だというEvolver.fmの報道から始まった。Evolver.fmの記事の大部分は完全に正しかったものの、最後の「販売」という部分は違っていた。Ek氏は30日、アプリケーションは今週から一般に公開される予定で、すべて無料で提供されると述べた。
ここで問題となるのは、「iPhone」やAndroid向けアプリケーションのように、製品から収入を得ることが許可されない状況で、どうやって開発者にSpotify向けの開発をする気にさせるのか、まだ分からないことだ。
さらに、音楽ファンが自分の音楽とやり取りする新しい方法にどれくらい関心があるのかという疑問がある。筆者は、Ek氏が記者会見でデモを見せたアプリケーションのほとんどに、それほど強い印象を受けなかった。音楽雑誌Rolling Stoneのアプリケーションでは、ユーザーは音楽を聴きながら、この象徴的なロック雑誌によるレビューを読むことができる。まあ、アプリがなくても、今でもウェブで簡単にレビューを読めるのだが。
Songkickのアプリケーションでは、筆者のお気に入りのバンドについて、なかなか手に入りにくい耳寄りな情報が得られる。Ek氏は、Songkickでは、アーティストのライブの場所と日時、さらには前回ライブの曲目リストまで分かることを聴衆に示した。これは便利だ。
しかしSpotifyのマネージャーらは、これはまだ始まりにすぎず、Spotifyの開発者向けプラットフォームがロンドンを本拠とする同社にどれほどの利益をもたらすのかすぐに分かると述べている。
Spotifyは3年前にスタートして以来、あらゆるトップクラスの音楽サービスの中でも特に優れたユーザーエクスペリエンスを提供しているとの評判を確立してきた。新しい機能やサービスのために開発者コミュニティーを発掘するにあたって、Spotifyはそうした評判を足掛かりとすることができる。どのようなアプリケーションが登場するかも分かっていないが、これはつまり、素晴らしいソフトウェアが出てくる可能性もあるということだ。
いずれにせよ、AppleやGoogle、AmazonといったSpotifyの有力な競合企業で、同じように開発者の創造性をうまく活用できる立場にある企業はない。
これらの競合企業はみな、開発者に対し、自社の音楽サービスを中心に据えて機能を構築できるようにはしていない。ただし、そうした企業が短期間で追いつくのは難しくないだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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