MOVIDA JAPANとスローガンが9月14日に発表したプログラム「グローバルスタートアップイニシアチブ(GSI)」は、これから就職を考えようとする大学生に新たな選択肢を与えてくれるものになるかもしれない。米国や欧州など海外で既に創業している有望なスタートアップ企業の日本・アジア支社を立ち上げて成功に導き、起業に近い体験を積める場を用意するという大胆なプログラムを推進するキーパーソンは孫泰蔵氏。そう、自身も起業家として学生時代にYahoo! JAPANを立ち上げるプロジェクトに参画していた人物だ。
リリースからプログラムの内容を詳しくみてみよう。このプログラムは大学生や大学院生を対象にした「ジョブ・プログラム」、つまり仕事(報酬ありのインターンシップ)として提供されるものだ。面接をクリアした人物は実際に勤務し、報酬(週5日の勤務のケースで月給20万円)を受け取る。業務の内容は米国・欧州のスタートアップ情報から日本やアジアで展開できそうな対象を「選定」し、事業プランを策定。さらに対象となるスタートアップ企業に交渉して立ち上げまでを行うというプロジェクト形式のプログラムだ。
インターンシップという形式ではあるものの、当然アルバイトでも就職活動でもない。起業家が自分達で資金を調達して取り組むような内容を、このプロジェクトがサポートして場を提供する、という捉え方が一番正しいだろう。MOVIDA JAPANはプロジェクトに参加する学生に対して、情報提供や交渉にあたってのアドバイスをするとしているが、実際はどこまで学生が自らの力で事業を切り開けるかが勝負になる。当然求められるレベルは相当高いが、孫泰蔵氏が学生時代に経験した内容を元に実践できるのは刺激的だ。
孫泰蔵氏は、ヤフーのプロジェクトの時を「あの地獄のような時期が、今となっては愛おしい」と振り返る。そして「体力と勢いだけで3日くらい平気で突っ走れてしまうような若い時に、高密度で尋常じゃない量の仕事を短時間で、昼夜を問わずハイテンションでやりまくる経験こそ、若い世代に伝えたいことだ」と語った。
デジタルガレージなどが推進するOpen Network Labやサイバーエージェント・ベンチャーズのStartupsなどは、シード向けの支援プログラムが起業家を次のステップに育成しようとしている。これに対して、今回発表されたプログラムは大学生という“起業家予備軍”に実際の起業に近い体験や必要なノウハウを与え、新たな起業家を生み出そうという意図が見える。
また、ここで生み出される事業が新たなスタートアップの受け皿として機能することも予想される。MOVIDA JAPANはシードアクセラレーターとしての側面もあるので、スタートアップの支援も推進していくだろう。当然すべてのスタートアップが成功するわけではないので、そのような「デッドプール入り」したスタートアップのメンバーが再びジョインするための“受け入れ先”として機能すれば、スタートアップのエコシステムが構築できるかもしれない。もちろん、事業化がうまくいけば、という前提付きではあるが。応募は9月28日までに専用ページのフォームから受け付けている。順次面接して確定させていくという。
以下は、今回のプロジェクトに対する孫泰蔵氏のメッセージだ。
かつて、僕がYahoo! Japanのプロジェクトに参画していたときがまさにそうでした。当時ソフトバンクオフィス内の「Yahoo! Japan準備室」に3カ月間テントを張り、そこに文字通り「暮らし」ながら朝から晩まで毎日力尽きるまでシステムの設計に知恵を絞ったり、コードを書いたり、作業分担や人の手配をしていました。
世界最先端のサービスを立ち上げるというワクワク感、頭がちぎれるくらい考え抜くという物事を突き詰める経験、締切りと戦うという緊張感と責任感、これ以上努力のしようがないというくらいやり抜いたときの充実感や達成感、そういったものを若い時に経験しておけば、その後の人生が何倍も楽しく、豊かになり、同世代の人たちとは実力で相当差をつけられるのはまちがいないです。
僕は、そういう経験をさせてもらえたからこそ今の自分があると思うし、あの地獄のような時期が今となっては愛おしく感じられるほどかけがえのない経験をさせてもらいました。
ぜひ皆さんたちにもそういう経験をしていただきたいという思いから、今回のプログラムを企画いたしました。
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