2009年に登場したAutodeskの「SketchBook Mobile」アプリケーションは最初の2カ月で100万件以上のダウンロードを記録し、同社を全く新しいビジネスに向かわせることになった。
それを考えると、指を使ってさまざまなスケッチを描くことが可能なこのアプリケーションのことを最高経営責任者(CEO)のCarl Bass氏が提供開始の1週間前まで知らなかったというのは驚きだ。
SketchBook担当のプロジェクトマネージャーであるChristopher Cheung氏は、「われわれが社内で注目されていなかったのは間違いない。SketchBook Mobileは小規模で、孤立したプロジェクトだった」と述べた。
SketchBookの成功は、部分的にAutodeskの経営陣の極端に不干渉主義的なアプローチから生まれた。このことは、アプリケーションの世界への進出を目指すほかの大企業にとっても教訓になるだろう。その見返りは非常に大きかった。SketchBookのおかげで、Autodeskは一般ユーザー向けデザインツールを提供する事業への参入のきっかけをつかんだ。それは、同社がそれまで考えたことのなかった方向性だった。
SketchBookの成功によって、プロのデザイナーや建築家、アーティストという特別な顧客に向けた製品を提供する古風な企業という印象が大半だったAutodeskがちょっとした話題を集める企業となったことも、同様に重要だ。
モバイルアプリケーションに生まれ変わる前のSketchBookは、スタイラスで絵を描くタブレットPCユーザーというニッチな市場向けの、非常に人気は高いもののユーザーの少ないプログラムだった。2008年にプロジェクトマネージャーとしてSketchBookを引き継いだCheung氏は、Appleの「iOS」ソフトウェアを開発者に開放するというSteve Jobs氏の発表を受けて、同プログラムをモバイルの世界まで拡大することに可能性を見いだした。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」