トレンドマイクロは8月25日、個人向け総合セキュリティソフトの新版「ウイルスバスター2012 クラウド」を発表した。同社のオンラインショップなどで同日から販売している。店頭では9月2日から販売する。オープン価格だが、オンラインショップでは1年版が5980円となっている。
ウイルスバスターは前版からアーキテクチャを大きく変え、クラウド技術「スマートプロテクションネットワーク(PSN)」をベースにすることで、ネット上にあるトレンドマイクロのウイルスデータベースを参照してマルウェアを検出するという仕組みになっている。前版では、検出するための定義ファイルの約80%をPCからクラウドに移行させている。
同様のアーキテクチャで構成される新版のウイルスバスター2012では、レピュテーション(評価)技術を拡張して「SNSプロテクション」機能を搭載している。SNSプロテクションは、Facebookやmixi、TwitterといったSNSのメッセージにあるURLを安全かどうか判定する。安全なものは緑色、既知の危険なものは赤色、不正の疑いがあるものは黄色、未テストのものは灰色でそれぞれ表示される。
仮に危険と判定されたURLをクリックしても、接続はブロックされる。SNSプロテクションは、ブラウザのプラグインである「Trend ツールバー」の「Trend プロテクト」として提供され、ユーザーはSNSを使っている時に特別な操作をせずにSNSプロテクションを利用できる。
トレンドマイクロの調査によると、SNS上の面識ある友人や知人から送られるメッセージに記載されているURLに対して、約半数が特に気にせずにクリックするという。不正プログラムの感染やなりすましによる不正なURLの拡散がセキュリティ上の懸念となっており、SNSプロテクションは、こうした実態に対応する機能になる。
ウイルスバスター2012には新機能「原因分析レポート」も搭載されている。既存の不正変更の監視機能を強化して、検出されたファイルを指定して、対象のファイルの侵入、作成された一連の経路を図示することで、いつ、どのファイルがどこから侵入したのかを把握できるという。
新版では「ファイアウォールチューナー」機能が強化されている。ボットネット特有の不審な通信を検出できるようになっている。脆弱性を利用してユーザーの操作なくPCに侵入するネットワークウイルスに対するパターンやルールも強化している。
性能面では、フルスキャンが高速化されている。一度安全と判定されたファイルは差分のみを検索対象とするなど、検索方法の効率化で前版からフルスキャンの時間を48%削減したという。省電力性能にも配慮されている。ノートPCがバッテリモードになった時に、ハードディスクの回転数を抑えた検索方法に切り替わり、電力消費量が低減できるとしている。前版に比べ62%消費電力を抑え、アイドル時のバッテリ駆動時間が6%(約20分)長くなるという。
同社取締役の大三川彰彦氏は「ウイルスバスターは1991年に初めて出荷され、2011年で20年になる」と説明。だが、この10年でネットの普及が大きく進むことで、ネットユーザーを狙うサイバー犯罪も増えていることを明らかにしている。
「ネットユーザーは10年前の2倍となる9408万人、人口普及率は78%。モバイル端末からネットにアクセスするユーザーは10年前の3倍以上となる8010万人となっている。だが、サイバー犯罪の検挙数はこの10年で7.6倍となっている」(大三川氏)
大三川氏は、ネットユーザーを取り巻く環境の変化としてソーシャルメディアの普及も挙げている。ユーザー数で見るとmixiが2000万人、Twitterが1000万人以上と大三川氏は説明する。加えて、ソーシャルメディアでは情報の受発信だけではなく、コミュニケーションの形も変化しているという。ソーシャルメディアがオフラインコミュニケーションを補完するものとして利用されていたり、ソーシャルメディアを中心にした新しいコミュニケーションになっているという状態だ。
大三川氏は、今セキュリティには「2方向の対策が求められている」と主張。「外の攻撃から防御することと内から出るデータを守る」ことが重要としている。
同社は同日、Android端末向けセキュリティソフト「ウイルスバスター モバイル for Android」の提供も始めている。9月2日から店頭でも販売する。オープン価格だがオンラインショップでは2980円、ウイルスバスター2012との同梱版の価格は7980円となっている。
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