われわれは、イノベーションの時代に生きている。立ち止まるということは、後退していくということにほかならない。
これは特に技術産業で顕著だが、新しい技術や新発見が恐ろしい勢いで文明を前進させている中、ほかの多くの業界でも多かれ少なかれ正しい。いずれ少しペースが落ち着いて、統合と効率化が進められる時期もやってくるだろうが、それはずっと先の話だ。
生き残りや成長のためにイノベーションを必要とする業界や組織に身を置いているのなら、成功するためには何でも管理したがる性向や運営の仕方を捨てて、人々が創造的に考え自立して行動できるような、今とは異なる原則に従うようにする以外にはない。
残念ながら、正しいことをするよりも台無しにしてしまう方が簡単であり、そうなれば従業員は混乱し、不満を持ち、息が詰まってしまうだろう。以下で説明する5項目は、多くのリーダーや企業がイノベーションを阻害するためにやっていることだ。これらのことの多くは、それだけの十分な理由(組織の維持、システム化、効率)があって行われているということを、念頭に置いておいてほしい。しかしいずれにせよ、その効果は同じことだ。
多くの会社では、成功するために組織が作られているのではないということは、公然の秘密だ。そういった会社の組織は、現状維持や組織を作った人たちに権力を集中させるために作られており、もし経営者がダメならば、何も達成できない。このような種類の組織では、プロジェクトは委員会のような組織で動かされることが多く、プロジェクトリーダーは作られない。プロジェクトの今後の活動については、複数の人やチームが合意する必要があり、それぞれが自分の役割を持つ。これは素晴らしいことで、平等主義的に見えるかもしれない。しかし、賢い人は物事の進め方について違うアイデアを持つのが普通であり、このやり方では全員が同じ方向を向いていなければプロジェクトは沈滞して行き詰まってしまうため、うまく行かないことが多い。よりよいのは、1人の人間をプロジェクトの責任者に据え(Appleのような会社では、この立場の人を「直接責任者」あるいはDRIと呼ぶ)、プロジェクトの一部としてその下にチームメンバーを配し、明確なゴールと目的を与えることだ。
管理を多すぎず、少なすぎず、バランスを取って維持するのは難しい。ほとんどの従業員の仕事への満足度は、上司との関係と密接に結びついているという結果が多くの調査で出ており、1対1で世話や指導を十分に行うのに十分な数のマネージャーを置く必要がある。その一方で、中間管理職が多すぎると、従業員は組織の真のリーダーからの距離が遠すぎると感じ、士気が下がり、コミュニケーションが遅れ、単純なプロセスにもオーバーヘッドが大きくなりすぎる。もしイノベーションの文化を作りたいのであれば、組織をフラットにし、階層をなるべく少なくし、それでいてすべての従業員が上司と定期的に若干の時間を取って、活気があり目標を外していない状態を保てるようにする方法を見つける必要がある。
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