新興企業のLytroは、写真撮影後にピントを合わせられるカメラを2011年後半に発売して、写真の世界に革命を起こすことを目指している。
それを実現する技術は光照射野と呼ばれ、光学分野では長期にわたって活発な研究が行われている。この技術では、レンズおよび画像センサ技術は特定の被写体にピントを合わせる代わりに、さまざまな方向から光線情報を収集する。撮影後にピントを合わせられるということは、撮影した写真のさまざまな側面を再現できるということだ。
Lytroは何年も前からこの技術の研究に取り組んでいる。筆者はLytroがRefocus Imagingと呼ばれていた2008年に、同社最高経営責任者(CEO)のRen Ng氏にインタビューしている(同氏はそのずっと前からスタンフォード大学で研究を始めていた)。そして同社は米国時間2011年6月21日、初代のカメラを2011年中に実際に発売する計画であると発表した。Ng氏はAll Things DigitalのIna Fried記者に対し、同カメラがポケットに収納できるサイズで「競争力のある価格」になることを明かしたが、それ以外の詳細は明かさなかった。
光照射野技術を使った写真撮影では、撮影後に写真を修正したり加工したりできる。例えば背景をぼやかして、前景の被写体に焦点を当てることが可能だ。写真家は長年にわたり、カメラとレンズを特定の被写界深度とピントに設定して同じことを行っているが、Lytroは同社の技術によって、そうした熟練を必要とする課題をなくすと主張している。
ただし、筆者はLytro自体がいくつかの課題に直面すると予想している。
まず、カメラ業界に破壊的な影響をもたらすのは困難である。デジタルカメラが起こした革命によって業界内の企業数は昔のフィルム時代より増え、競合企業の数は既に飽和状態に達している。ただし、非常にニッチな市場を開拓することが可能なことは、GoProのような企業が示しており、また既存の大手企業も、スマートフォンによる写真撮影でそのメリットを十分に生かす、ネットワーク接続のような新しい難題への対応に苦戦している。
第2に、光照射野技術による写真撮影は利点ばかりではないということだ。この技術では、解像度を犠牲にしてより大きな深度を捉える。現在、解像度は非常に高くなっているから問題はない、と主張する人もいるかもしれない。だが、Lytroは同社の画質が満足できる水準に達していることを証明しなければならないだろう。
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