KDDIは6月21日、起業支援プログラム「KDDI ∞ Labo」を開始するにあたりキックオフイベントを開催した。冒頭に登壇したKDDI代表取締役社長の田中孝司氏は、「KDDIと一緒に、グローバルで通用するインターネットサービスを作ってもらいたい」と呼びかけた。
KDDI ∞ Laboは、新たなネットサービスに関するアイデアを持つエンジニアやスタートアップ企業向けに、KDDIがさまざまな支援を提供するインキュベーション(起業支援)プログラム。田中氏の肝いりでスタートした。
KDDIは5月の新製品発表会でKDDI ∞ LABOを発表し、同時に参加者の応募を開始した。現在11~12件の申し込みがあるという。対象となるのは、Androidを中心としたネットサービスやプロダクトで、「iPhoneでもWindows(Phone)7でもいい」(田中氏)というが、基本的にはKDDIが注力するAndroidをターゲットとしたものを想定する。
参加対象者は、スタートアップ企業や個人といった、アイデアはあるがサービスの実現に支援が必要な人に限定しており、法人の場合は従業員が10人以下、設立3年未満が条件となる。
応募された中から独創性、市場性、技術力、チーム力といった項目を総合的に判断し、まずは5~10チーム程度を選出し支援を提供する。審査基準はいくつかあるが、特に「ワクワクするもの」(新規事業統括本部新規ビジネス推進本部副本部長の塚田俊文氏)を重視するそうだ。
選出されたチームに対しては、東京と六本木にコミュニティスペースを提供。KDDI側のメンバーが毎週対面のアドバイスを実施してサービス開発を支援する。また、プレゼンテーションを毎週実施し、チーム同士で議論する。社外アドバイザーによる毎月1~2回のサポートも提供する。
3カ月間で一定のアプリなどの開発を済ませ、さらに約3カ月で事業化を支援する。社外アドバイザーにはグリー、頓智ドット、Lunascapeなど、幅広い人材をそろえた。
KDDIでは最新OSの情報や端末の提供および貸与、KDDIクラウドサーバサービスなどを提供するほか、「Googleにも掛け合っていて、うまくいけば連携もしたい」(塚田氏)という。KDDIが米国で展開するMVNOや世界中のデータセンター、アジアのSI事業など、海外の事業展開も支援するほか、auのマーケティングデータ、経営支援サービスに加え、KDDIの出資や事業提携も検討する。
実際の製品化では、au oneポータルサイトやau one Marketなど、KDDIやauのウェブサイト、KDDI DESIGNING STUDIOでのプレゼンテーションなどのプロモーション支援も行う。
田中氏は、1985年からスタンフォード大学に留学してコンピュータネットワークを専攻した当時、「一旗揚げようとしていたが、仕方なく日本に帰ってきた」経験があるという。Facebookとの提携のために渡米した5月に、当時の宿泊先を訪問した際にそれを思い出し「今日のプレゼンテーションにいたった」と振り返る。
田中氏は、携帯電話の新規ユーザーが頭打ちの中、スマートフォンが急速に伸びていることから、これから3~4年で1000万弱の台数まで達すると見ており、「右肩上がりのチャンス」と強調。「新たなビジネス、アイデア、ソフトウェアがもう一度爆発するチャンスがあるのではないか」と指摘する。
田中氏の、そうしたチャンスに「頑張るエンジニアの力になりたい」という思いから今回のプログラムがスタートした。田中氏は「社長なので自由になるお金がそれなりにあるため、何かをやりたいと思っている」と話し、エンジニアの夢を実現するためのサポートをしていきたい考えを強調する。
支援を受けた場合の制約は特になく、「プログラム中に他社との提携や出資がある場合は事前に教えて欲しいが、KDDI以外からサービスを提供してもいい」(塚田氏)とのことで、制約を設けるつもりはないという。ただ、「まずはKDDIで(実現したサービスを)提供して欲しいとは思う」(塚田氏)といった希望はあるそうだ。
田中氏は、「最初にauで(新しいサービスが)出て、ほかのキャリアでも使われたらKDDIのブランドも良くなる。オープンプラットフォームの時代にはオープンプラットフォームのやり方がある」と話す。革新的なサービスがKDDIの支援で実現することを重視しており、田中氏が目指す「ワクワク感」が生まれることでKDDIのブランド向上につなげたい狙いがある。
KDDIでは当初は5~10チームに対して支援を提供するが、その後も継続して公募を続けていく考えだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス