ソニーは5月26日、2011年3月期(2010年4月~2011年3月)通期の連結決算を発表した。5月23日に発表した通り、株主に帰属する当期純利益は2600億円の損失になったものの、ゲーム、ソニー・エリクソンなど赤字計上されていた事業の収益が改善するなど、全セグメントで黒字化した。
売上高は7兆1813億円、営業利益は1998億円で前年度の6倍という大幅な増収となった。増収要因としては、イメージセンサの売り上げが増加した半導体、デジタルシネマプロジェクタが好調だったプロフェッショナルソリューションなどが挙げられているほか、「PlayStation 3」(PS3)ハードのコストが大幅改善したこと、ゲームソフトの売上増、ソニー・エリクソンのスマートフォン投入によるコスト構造の改善など。赤字事業として挙げられた2つの事業の改善が大きく寄与したとのことだ。
しかし、同じく赤字が続くテレビ事業は販売台数が前年から680万台増の2240万台と大きく増えるも、価格下落や為替の影響を受け黒字化には至らなかった。この結果に対して執行役 EVP CFOの加藤優氏は「例年マーケットの厳しさを踏まえて販売計画を出しているが、利益が出ないことが続いている。この結果は前提が甘かったということではなく、実行力みたいなものに要因があると思っている」と分析した。
この結果を踏まえ2011年度のテレビ事業に関しては「2010年度はパネルの調達が思うようにいかなかった。2011年度はマーケットの動向をみながら最適な調達方法を考えていきたい。加えて固定費、材料費を下げる、製造の効率化を図るといった定番のメニューは引き続き取り組む」とした上で「次世代のディスプレイについても一方で考えている。現在主流となっている液晶テレビは当社も苦労しているが、他社も利益が出ていない。技術革新をしながら次世代という施策もしなければいけない」(加藤氏)と続けた。
4月に発生した「PlayStation Network」(PSN)と「Qriocity」の不正アクセスをはじめとするハッカーによるアタックに関しては「数日間にいくつかのウェブサイトに関してハッカーによるアタックが起きているが、基本的にはPSN、Qriocityとは別のハッキング行為であって、一概にひとつのものと捉えることはできないと思っている」(業務執行役員 SVP 広報センター長 神戸司郎氏)とした。
PSNは「5月中にすべてのサービスを再開したいという目標は変えていない。米国、欧州では部分的に再開を進めており、残る日本とアジアに関しても、近日中に部分再開したい」(加藤)と再開時期を明らかにした。ソニーでは、今回の不正アクセスにかかる費用を140億円と試算している。
また、大幅に収益が改善したゲーム事業については「過去数年の赤字要因はPS3のプラットフォーム開発費。多くの技術を積み込んだ結果、コストの乖離が大きく、ここ数年大きな損失を生んだ。年末には新たなゲーム端末として『NGP』が発売されるが、PS3のときとは状況が違う。初期投資に膨大なお金をかけることは、将来のプラットフォームに関しては考えていない。ゲーム事業は基本的にソフトビジネスなので、いかにソフトを作り易くするか。当社だけでなく、サードパーティのソフトマーケットを盛り上げていければ、収益性は高い」(加藤氏)と話した。
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