ソフトバンクモバイル取締役副社長の松本徹三氏は、5月25日に開幕した「ワイヤレスジャパン2011」の基調講演で、モバイル通信の将来像やソフトバンクの戦略について語った。
松本氏は冒頭で「今日は海外の講演とまったく同じ内容を話す」と挨拶。その理由として、日本では日本市場ありきで事業を展開し、その後海外に進出すると波長が合わず失敗する企業が多いと指摘。今後はグローバルスマートフォンをはじめ、常に世界を意識した事業展開が必要だと説明した。
また、ソフトバンクはネットワークオペレーターではなく「ネットワークオペレーションを含む、総合的な価値を提供する会社」だと語る。ユーザーにとって重要なのは、端末と機能、そして月々の料金であり、これらを総合した価値を提供することで顧客との密接な関係を築いているとした。
日本では通信事業者が割賦販売の端末代や通信代、各サービスの使用料をユーザーに一括で請求し、その料金を端末メーカーやサービスプロバイダと分配する。松本氏は、通信事業者がエコシステムの中核を担う日本のビジネスモデルについて、「世界で最も進んだ理想的なエコシステムだ」と強調する。
「日本では通信会社が偉そうにして、いろいろなことをコントロールするからメーカーの立場が弱いと言う人がいるが、肝心のメーカーはそんなことは思っていない。10年前に携帯電話の売り切りが始まった当初はメーカーブランドというものもあったが、結局はトータルのエコシステムがうまく回り、現在の形が実現した」(松本氏)
松本氏によれば、近年欧米でもこのようなエコシステムが採用されつつあるという。高機能化したスマートフォンが一般的になったことで端末の価格が高額になり顧客に売れなくなった。そこで24カ月継続して使用することを条件に端末代を安価にする、日本の販売方法に近づいているという。「よく日本も欧米のようにSIMロックフリーにするべきだと言うが、今欧米で起こっているのは逆のこと。スマートフォンにロックをかけてその代わりに安く販売している」(松本氏)
2011年3月期のソフトバンクの売上高は初めて3兆円を超えた。一方で、肝心のモバイルネットワークへの投資が遅れているが、ソフトバンクでは2011年と2012年にそれぞれ5000億円ずつ、合わせて約1兆円を投資すると発表している。
「タイミングが遅れたのではという声もあるが、ネットワークの投資は『周波数』と『技術』と『タイミング』を合わせなければならない。ソフトバンクとしてはもっと早くしたかったが、周波数がない、技術の成熟を待たなければならないという苦しい事情も若干はあった」(松本氏)
今後の通信速度の改善については、下り最大42Mbpsの高速パケット通信サービス「ULTRA SPEED」の対応端末を拡大する。また、松本氏は700/900MHz帯の周波数を何としても取得したいと語り、「これ(700/900MHz帯の周波数)を貰えれば、ソフトバンクはもうネットワークで遅れていると言われることはない」と、総務省による周波数の割り当てに期待を寄せた。
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