経験と同様に、人間としての成熟度によっても会社に要求できる報酬の額は変わってくる。エンジニアとしてほぼ同じスキルを有していながらも、人間としての成熟度が大きく異なっていたがゆえに、その経験も大きく違ったものとなっているという例も数多くあるのだ。成熟度の高い人間の方が、ストレスに対する耐性を備えているだけではなく、突発的な事態に対して臨機応変に対処することもできる。だがさらに重要なことは、人間として成熟している社員の方が、対人関係においてもはるかに優れているということだ。プロフェッショナルな態度がとれるということは、この業界において強い力となるものの、そういった態度は人間が成熟していない限り身に付けづらいのである。
文書化されているソリューションが役に立たないという場合もある。こういった場合、創造力によって問題を解決できることもあるはずだ。しかも、ただ解決できるだけでなく、より安価で信頼性の高いソリューションを生み出せることもある。とは言うものの一般的には、教育を通じて創造力を高めることはできない。要するに人は、創造力に富んでいるタイプと、富んでいないタイプに大別できるわけだ。IT分野で働いている人のほとんどは後者であるものの、あなたが幸運にも前者である場合、そのことを武器にし、昇給について話し合う際に活用するのがよいだろう。
先ほど述べたように、この業界において顧客とエンジニアをつなぐインターフェースは、大げさに言えば企業の収益を左右するほど重要なものと言える。あなたが顧客やユーザーとの間に強い関係を築き上げているのであれば、あなたと同程度のスキルを有しているものの顧客との関係をうまく築けていない同僚よりも、ずっと会社にとって価値の高い存在となっているはずだ。このことは、あなたがやり取りしているすべての顧客やユーザーと強固な関係を築き上げている場合に特に言えるはずだ。また、そういった顧客やユーザーの重要度が高いほど、会社にとってのあなたの価値も高くなるわけだ。
社内のバックアップシステムの開発を行った管理者は、あなたなのだろうか。あるいは、ネットワーク全体のドキュメントを何週間も費やして作成したのは、あなたなのだろうか。また、自社のシステム(あるいは顧客のシステム)について、部門内の誰よりも詳しいのは、あなたなのだろうか。もしそうであれば、昇給の根拠は簡単に提示できるはずだ。こういった根拠を考える際には、万一あなたが会社を辞めた場合、会社は何を失うのかということを常に頭に置いておくようにしてほしい。あなたがほかの管理者よりも自社システムに詳しいというのであれば、こういったことに対する答えはひと味もふた味も違ったものとなるはずだ。
最後に注意しておきたいことがある。筆者は、いきなり上司のオフィスに押しかけ、プリントアウトした本記事を机の上に叩き付けて給与の値上げ交渉を始めてもよいと述べているわけではない。知ってのとおり、給与の値上げ交渉というものは一筋縄では行かない。一歩間違えばとんでもないことになる可能性もある。昇給が当然であると考えられる場合にのみ、スマートに、かつ細心の注意を払って交渉に臨むようにしてほしい。最終手段に出るようなことは、(解雇されたり、人員整理の対象になったりしても構わないというのでない限り)避けるようにしてほしい。とは言うものの、あなたが平均的なITプロフェッショナルよりも頑張っているというのであれば、給与の値上げは可能であると確信してもよいだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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