Amazonは米国時間3月28日夕、ユーザーがデジタルメディアを同社サーバに保管できる新サービスを発表し、クラウド分野でAppleとGoogleを抜き去るとともに、大きな反響を巻き起こした。
Amazonがしなかったのは、このサービスを提供するために、ハリウッドの主要な映画制作会社や、大手レコード会社からライセンスを得ることだ。確かに、映画業界や音楽業界の多くの人々が、Amazonの新サービスは適切な許可を受けない限り、各社の法的権利を侵害することになると考えているという。エンターテインメント業界の複数の情報筋が米CNETに語った。
28日夕に発表された「Amazon Cloud Drive」は、ウェブ経由でアクセスできるハードドライブバックアップサービスだ。ユーザーは手持ちのデジタル形式の楽曲、動画、写真、文書、音楽を保管することができる。また、Amazonは「Cloud Player」も発表した。これはCloud Driveにアップロードした楽曲を再生するものだ。Amazonがこのサービスを準備しているというニュースは、25日に米CNETが最初に報じた。
情報筋によると、Amazonは一部の映画制作会社やレコード会社と会い、同社の計画を説明したという。そうした会談の中でAmazonの幹部は、サービスを素早く立ち上げたいと考えており、各社の賛同を得たいと話した。また、Amazon幹部は席上、ライセンスを得ずにサービスを発表する準備があり、交渉は後日行うつもりだと述べたという。
Amazonは28日のThe New York Timesとのインタビューで、少なくとも音楽に関してはもっと挑戦的な姿勢を見せている。同紙はAmazonの音楽担当ディレクターCraig Pape氏が、「音楽を保管するのにライセンスは必要ない。機能としては外付けハードドライブと同じだ」と発言したと伝えている。
米国4大音楽レーベルには、この動きを冷ややかに受け止めているところもある。2010年にクラウドサービスが注目を集めるようになってから、レーベル各社は、現行のライセンスではクラウドによる配信や保管は認められていないとの立場を明確にしてきた。レーベルの考えとしては、そうしたサービスを提供する企業は必ず許可を得ることが必要になる。The Wall Street Journalは28日夕、Sony Music Entertainmentの関係者の「Amazonが提案しているロッカーサービスが、Sony Musicの許諾を得ていないことに失望している」との発言を伝えた。
レコード会社や映画制作会社が次にどう動くかは予測が難しい。音楽業界の情報筋によれば、ほかの4大レーベルの中には、29日午前の時点ではまだCloud DriveとCloud Playerを評価している段階で、Amazonがその立場を正当化するためにどのような法的根拠を持ち出すのか探ろうとしているところもあったという。
レコード会社が現時点で訴訟を起こすことはなさそうだが、いずれ法廷闘争となる可能性はある。4大レーベルの中では一番規模の小さいEMIは2007年、MP3tunes.comと、その創設者でクラウド音楽配信の草分けの1人であるMichael Robertson氏を相手に訴訟を起こしている。
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