EMIは、Robertson氏とその会社が著作権侵害を助長していると非難した。The Beatlesの楽曲を保有し、歌手のKaty Perryが所属するEMIは、Robertson氏はMP3tunes.comとSideload.comという2つの事業を設立することで、著作権侵害を助長したと主張している。EMIの訴状では、Sideload.comは、ユーザーがウェブ上の違法な音楽ファイルを見つけ出し、そのリンクを整理するのを手助けしているとされている。一方MP3tunes.comは、音楽制作者に対価を支払うことなく、海賊版コンテンツを保管するのに用いられているという。
Robertson氏はこのような申し立てに反論している。同氏の主張によれば、この訴訟は、クラウドの利用を制限することで、ユーザーが既に所有している楽曲へアクセスするのに料金を支払わせようという、レコード会社側の企てにすぎないという。両者はこの訴訟について、判事による略式判決を待っている。判決はいつ出てもおかしくない状況であり、この訴訟は、クラウドは実際には誰のものかを決めるのに役立つ可能性がある。
では、Amazonがコンテンツサプライヤーとの関係悪化や、ライセンス問題をめぐる訴訟といった危険を冒そうとするのはなぜだろうか。理由として考えられるのは、そうしなければ、何カ月もの間、交渉から抜け出せなくなっていたかもしれないということだ。音楽のライセンス取得は、特に新しいクラウドサービスについては、複雑なプロセスだ。交渉が何年も長引いたケースもある。
Amazonがクラウドサービスへと最初に参入するつもりでいたとすれば、残り時間はわずかだった。米CNETは先週、Googleが従業員を使って「Google Music」の社内テストを開始したことを報じている。また、Bloombergが3月に報じたところでは、Appleは、「iTunes」ユーザーにクラウドベースの楽曲へのアクセスを提供することをめぐって、主要レコード会社と交渉しているという。
Amazonは、通常の段階を踏むことなく、GoogleとAppleを一気に追い抜くとともに、サプライヤーを怒らせる危険を冒すという大胆な手段を取った。Amazonとしては、一番に行動することのメリットがあまりにも多かったため、じっとしていられなかったのかもしれない。
映画制作会社のある情報筋が筆者に最近語ったところでは、デジタルロッカーサービスのユーザーは、手間をかけて自分のメディアをアップロードした後では、サービスを乗り換える気にならない可能性があることが、調査によって分かったという。この情報筋は、映画会社はiTunesで同じ経験をしたと語る。一般的に、ユーザーはほかのサービスに移らない。つまり、最初にユーザーを獲得したサービスは、そのユーザーを確保できる立場にあるということだ。
Amazonがクラウドストレージサービスに参入したことの良い影響として考えられるのは、GoogleやAppleが動きを早める可能性があることだ。以前のAmazonは、デジタル配信よりもDVDやCDに軸足を置いていた。魅力的な企業としては、GoogleやNetflix、Appleなどがあり、この1年はそうした企業ばかりが注目されてきた。
そしてAmazonは3月、同社の「Amazon Prime」会員に映画やテレビ番組5000本以上を無料でストリーミング配信するサービスを発表して、衝撃を与えた。アナリストらは、Amazonには、優位に立つNetflixに挑むための資金とユーザー基盤があると指摘している。この動きによって、Amazonは動画ストリーミングの世界で重要な存在になった。
この発表は、Netflixの株価を下げただけでなく、Amazonはデジタル配信で目立たない存在のままでいるつもりはないというメッセージになっている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス