米国サンフランシスコにて2月15日、セキュリティカンファレンス「RSA Conference 2011」が開幕した。同カンファレンスは、今回が第20回目の開催となる。
基調講演に立った米EMC エグゼクティブバイスプレジデント 兼 EMCのセキュリティ部門であるRSAのエグゼクティブチェアマンを務めるArt Coviello氏は、「信頼できるクラウド」と題した講演の中で、「信頼できるクラウドを構築するためには、実際のクラウド条件を検査し、監視する必要がある。そのためには、これまでのセキュリティの固定概念を捨て、新しい方法で既存の技術を活用しなくてはならない」と述べた。
Coviello氏は、「メインフレームからクライアントサーバへの転換など、IT業界では過去にさまざまな転換を経験したが、セキュリティの目標は変わっていない」と話す。その目標とは、「適切な情報を適切な人に、信頼できるインフラを通じて提供すること」だ。しかし、情報やID、インフラは変化しており、その制御や可視性に課題が生じているとCoviello氏は指摘する。
情報の変化とは、情報量の増加と機密性の高い情報を共有することが増えているという現状だ。IDの変化とは、モバイルワーカーの増加や接続デバイスの増加を指している。またインフラの変化とは、仮想化やクラウドのことで、仮想レイヤの存在によって保護すべき情報が物理インフラから見えなくなっているとCoviello氏は話す。
こうした変化による課題を挙げると、仮想化とクラウドが問題を複雑にしているようにも思えるが、「実際には仮想化とクラウドを正しく活用することで、物理ITが提供する以上の制御レベルと可視レベルが達成できる。単一プラットフォームに複数のシステムを統合すれば、仮想インフラ上にあるすべてのコンポーネントを管理し、監視できるようになるのだ」とCoviello氏は主張する。
そこでCoviello氏は、仮想環境全体の可視性と統合制御を可能にし、セキュリティとコンプライアンスを改善するという3つの方針について語った。
まず1点目は、論理的で情報中心のセキュリティを重視することだ。「クラウドでは、物理的なインフラやバウンダリよりも、情報やトランザクションによって定義される論理バウンダリを重視することで、強力なセキュリティが得られる」とCoviello氏は言う。
2点目は、インフラやアプリケーションにセキュリティを組み込むこと。「クラウドと同じレベルでセキュリティとコンプライアンスを実行するには、インフラなどにセキュリティが組み込まれることが不可欠だ」とCoviello氏。これは、仮想コンポーネントにセキュリティを組み込むことにもつながり、さらにはクラウド全体にセキュリティを提供することにもつながるとCoviello氏は説明する。
3点目は、セキュリティをリスクベースで適応能力のあるものにすることだ。Coviello氏は、ルールやシグネチャによる静的なセキュリティアプローチでは高度な攻撃に対応できないとし、「近い将来ユーザーの行動やトランザクションパターンなどからリアルタイムの予測分析でリスクを発見し、積極的な対応ができるようになるだろう」と述べた。
壇上には米VMware 最高開発責任者(Chief Development Officer)兼 製品担当共同プレジデントのRichard McAniff氏も登場。VMwareの仮想インフラにセキュリティを組み込むことで信頼できるクラウドが提供できるとし、「例えばVMwareの仮想セキュリティ管理技術vShieldとRSAのDLP(Data Loss Prevention)ソリューションを組み合わせることで、仮想インフラレイヤにて自動的に情報が分類、発見され、セキュリティポリシが実行されることになる。これは、インフラのセキュリティ構築にあたって情報中心のアプローチができるということだ」と述べた。
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