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2011年のモバイル業界展望--SIMロック解除における3つの重点 - (page 2)

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iPhoneをめぐる2社の動きは要注意

 SIMロック解除については、既にNTTドコモ代表取締役社長の山田隆持氏が2010年7月に「2011年4月以降に発売する全機種について、ユーザの要望があれば原則解除する」ことをいち早く表明した。NTTドコモにしてみれば、過剰と言われるほど十二分にネットワークに投資をしており、品質は最も高いとの自負があるのだろう。さらに、2010年は顧客満足度ナンバーワンを奪還し、解約率も0.4%台と驚異的な状況であることから、SIMロックを解除したところでNTTドコモにとってはまったくリスクがないと判断したと思われる。

 加えて、MNP(Mobile Number Portability、携帯電話番号ポータビリティー)を利用しSBMに流出しているユーザーは、基本的にはiPhoneが目的で流出しているであろうことは容易に想像できるし、それらのユーザーも仮にNTTドコモにiPhoneがあれば、SBMへ移行することは恐らく無かったであろうことをNTTドコモ自身が最も理解しているはずだ。だからこそ、総務省のガイドラインが出て1カ月も経たないうちに企業のトップがみずからSIMロックを解除することをいち早く表明できたのである。

SBMの予防線は必至か

 一方、「光の道」に関しては「A案、B案」とマスメディアを通じ威勢よく主張するソフトバンクも、こと「SIMロック解除」に話がおよぶと曖昧模糊な意見答弁となる。

 無理も無い。iPhoneのSIMロックを解除すれば、NTTドコモへの流出が危惧されるからだ。ただ、既に発売されたiPhone 3G、3GS、4は対象外。これらiPhoneシリーズは、既にSBMの契約者数の1割超におよび、かつ購入時から丸2年は「バリュープログラム(i)」など購入支援施策で拘束されている。発売が再三にわたり延期されているiPhone4ホワイト、今夏に発売されるであろうiPhone 5なのか、次期iPhoneからがSIMロック解除の対象となる可能性がある訳だが、これまで同様「バリュープログラム(i)」のような購入支援策で拘束するであろう。

 今夏は2008年に発売されたiPhone 3GSが丸2年を迎える為、買い替え需要期となるが、仮に次期iPhoneにSBMがSIMロック解除を導入せざるを得ない環境になったとしても、2年の契約期間を購入時に確約するユーザーには購入支援策を行い、そうでないユーザーには「月月割」も無ければ、端末も6万円近い定価で購入してもらうという契約形態と、マーケティング施策でSBMにとって被害が少ない予防線を張るのではないかと想定する。

iPhoneの1国複数事業者制は米国でも?

 こうした動きの半面で、アップル側の動きにも注視が必要だ。既に、海外の多くの国でiPhoneは、1国複数事業者で発売されている。Android端末のラインナップ増に伴い、米国では既に四半期ベースでのiPhoneの販売数をAndroid OS採用端末が上回るという現象も顕在し始めた。つまり、iPhoneのスマートフォン市場における累計稼動シェアが、今後相対的に低下する可能性があるのだが、製造業が利益を最大化するためにはやはり出荷数を増やすしかない。

 加えて、米国ではVerizon向けにCDMAに対応したiPhoneを2011年の早い段階で出荷するという可能性は衆目の知る通りであり、実現すればアップルのお膝元である米国ですら1国複数事業者になるのである。パケットARPU(加入者1人あたりの月間売上高)先進国のわが国市場でも、シャープや富士通といったベンダーがAndroidに積極的になり始め、韓国SamsungもAndroid OS採用のGalaxy Sで日本市場での市民権を得ようとしている。こうした中、アップルがシェアを維持して伸張させるためには、やはりNTTドコモへの納品、もしくはNTTドコモのネットワーク上でも使えるiPhoneの日本国内での流通を真剣に考えざるを得ないであろう。

 筆者の周囲でも、香港やオーストラリアなどでSIMロックを解除したiPhone 4にNTTドコモのSIMをSIMカッターで自作micro SIM化して利用するユーザーがいるが、NTTドコモネットワークでiPhoneを使いたいというニーズは根強い。日本国内において、iPhone普及の功績はアップルの製品力もさることながら、やはりSBMの販売力やマーケティング力に拠る所が大きい。こうしたSBMの功績に対して、アップルも不義理をしない形で次なる一手としての多キャリア化を考える時期に差し掛かってきているのではないかと想定する。

骨抜きガイドラインで見落とされた議論

 総務省の示した「SIMロック解除に関するガイドライン」で、一点見落とされた議論について、SIMロック解除の議論を締めくくる前に指摘しておきたい。それは、「端末は誰のものか?」ということだ。無論、端末の購入に際して対価を支払った者に所有権があることは説明するまでも無いが、割賦弁済金を完済(もちろん一括で購入している端末も含む)、もしくは割賦残債を支払い期間中に一括で弁済し、さらに解約違約金を支払った端末についての取り扱いがガイドラインで一切触れられていなかった。この点、筆者は完全な骨抜きガイドラインであり、当該ガイドラインの作成に携わった総務省の失態と考えている。

 2011年4月以降に発売される端末について、原則としてSIMロックを解除することが可能となるよう事業者に協力を求める総務省のスタンスは理解できる。先に触れた通り事業者にとっての課題も多いし、現実的にいつ何時他の事業者に出て行くかもわからない端末をあえて調達し、販売する動機など一切無いであろう。

 しかしながら、債務の無い支払いが終わった端末の使途について、自由度を持つことが出来ないというのは一ユーザーとして、理解に苦しむところだ。パケット上限の料金が多少高くても、iPhoneをNTTドコモのネットワークでストレス無く使いたいというユーザーもいれば、ネットワーク品質が悪くてもNTTドコモでしか出ていないAndroidケータイを700万パケット分が包含され、3985円で実質的に使い放題のSBM「パケットし放題MAX」で使いたいというユーザーもいるであろう。

 通信事業者の調達する端末に事業者色が薄くなればなるほど、こういったニーズも増えるであろう。この点について、ガイドラインの各社の運用状況や「スマートフォン化」の進展をモニタリングしながら、総務省で議論がなされることを望みたい。

筆者:梶本浩平(かじもと こうへい)

外資系金融機関にて、リサーチアナリストとして通信セクターを担当。株式上場前のNTT移動通信網(現NTTドコモ)に入社後、iモードの初期開発メンバーとしてサービス立ち上げに従事した後、海外通信事業者との資本提携業務に携わる。2007年9月より、みずほ信託銀行調査役・シニアアナリストとして通信、インターネット、電子部品のセクターアナリストとして従事した後退職。2008年11月より現職。

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