“144.3cm2”がデスクトップを変える--アップル「Apple Magic Trackpad」レビュー - (page 3)

ワイヤレスだからこその広がり

 デスクトップ向けのトラックパッドとして登場したMagic Trackpadは、まず僕がそうしたように、デスクトップでのマウスやトラックボールから置き換える端末として活用できる。特にアップルのワイヤレスキーボードとのデザインのマッチングは最高だ。ノートブック型のトラックパッドと違い、右手をマウスやトラックボールを使うときのように、キーボードのホームポジションからスイングさせて使うことになるが、キーボードとぴたりとくっつけることができるため、その距離も短くなる。

 ただ実際に使っていて、ぴたりとくっつけていると、リターンキーやカーソルキーを操作するときにパッド面に触れてしまうことがあり、またスイングさせた時にパッドに対して少し斜めに操作する事になる。そこで、キーボードから指1本分だけ離して15度ほど外側に回転させた状態が、僕にとって最も使いやすいセッティングだという結論に至った。パッド自体は無線で接続しているため、基本的にデスクのどこにでも置くことができる。左手で操作したい場合や、より手元に置きたい場合なども、自在に対応できる点が魅力だ。

 ただし、サイズがCDのジャケットと同じくらいあるため、MacBookなどと組み合わせて使うのはオススメしない。同じしくみのパッドが本体に内蔵されているため、わざわざ手をキーボードから離して使う意味がないからだ。では、ノート型ではまったく使えないか、と言われるとそうではない。Bluetoothは、約10mまでなら離れて利用できる。そのため、ウェブブラウザを見せたり動画再生などのデモが入るプレゼンテーションで、パソコンから離れてスピーチをするといった場合には便利だ。

 スライド送りはクリックでできるが、アップルの「iWork」に収録されている「Keynote」の場合、タブレットのクリックがスライド送りだが左下をクリックするとスライドを戻すこともできる。また、3本指でなぞるとアプリ切り替えが可能なため、スライドとブラウザ、ビデオプレイヤーを切り替えながら行うプレゼンテーションも華麗にこなすことができるだろう。

 そしてもう1つは薄型テレビに接続することが想定されている「Mac mini」のためのポインティングデバイスと言う用途だ。リビングのソファに座っているときには、平面を確保できないため、マウスを操作することは難しかったが、このMagic Trackpadなら膝においてタップしながら、3m離れた画面を操作することができるようになる。キーボードがいらないときにはMagic Trackpadだけを手や膝の上に載せて置くだけで快適に操作する事ができるのだ。

Magic Trackpadから透ける未来

 普段の生活を考えてみると、ノートパソコンのトラックパッドに加えて、iPhoneなどのスマートフォン、iPadなどのタブレットと、モバイルタッチデバイスが当面の身の回りにあるインターフェースの最適解のように扱われ、ガラス面に触ってコンピューターを操作するのが当たり前の日常を送っていることに気付かされる。マウスとトラックパッドのどちらが使いやすいか、というのは個人にも依ると思うが、これだけタッチデバイスが多く使われ、またノートパソコンの販売がデスクトップを上回りトラックパッドに慣れているコンピューティング環境からすれば、デスクトップでもインターフェースが使えることに、一定の合理的な意味があるのではないか、とも思える。

 しかし、アップルがそれだけのためにわざわざMagic Trackpadを登場させたのだろうか。どうもこの「マジック」という部分は邪推を誘うのだ。

 現在タッチデバイスで利用できるアプリが、アップルのモバイルデバイスの競争の源泉となっており、また自分にとって最も使いやすいデバイスを自分でデザインしていくという意味での、ソフトウェア的な『手になじむ』感覚が得られている。この競争の厳選をデスクトップやノートブックなどのパソコンの世界にも持ち込んでくる可能性はないだろうか。

 Macにはウィジェットを動作させることができる「Dashboard」が用意されており、電卓や辞書、iTunesコントロールなどを簡単に呼び出してシンプルに目的の機能を呼び出せる。これらはHTML、CSS、JavaScriptで動作しており、当然エンジンはWebKitだ。WebKit自体はすでにiPhoneやiPadでタッチデバイス対応を果たしているため、例えばウィジェットがマルチタッチのトラックパッドに対応して、これまでにない操作体験を可能に出来る事は考えられる。あるいは、アプリをDashboardから呼び出せても面白い。

 モバイルデバイスとパソコンとの間で、同じインターフェースを備えるようになり、同じアプリケーションが扱えるようになる未来は、想像に遠くない。クラウドを絡めれば、デバイスを問わず連続的に扱えるようになり、よりシンプルで簡単な体験に進化していくことも考えられる。

 デスクの傍らにあるMagic Trackpadに触れながら、今回もインターフェースが持つ面白そうな未来に、思いをはせている。

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