アナログテレビ放送停波のちょうど1年前となる7月24日、都内で総務省や社団法人デジタル放送推進協会(Dpa)が主催するイベント「日本全国地デジカ大作戦〜地上・BS完全デジタル移行まったなし1年前の集い〜」が開催された。イベントに登壇した原口一博総務大臣をはじめとする関係者は一様に「目標達成」への意欲を口にした。
原口大臣は「(デジタル対応端末の普及率)83%、残りの普及を心配する声もあるが、ようやくここまできた」と現状を評価。「電波の有効活用につながるデジタル化を断固、推進していく」と改めて決意を示した。
端末の普及状況については、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)会長で三菱電機取締役会長の下村節宏氏が「(6月末時点で)端末出荷台数1億台まで残り2000万台を切った。エコポイントの効果もあり、目標を上回るペースで来ている」と説明。一方で、メーカー側が考える懸念材料として録画機、各種ポータブル端末などに搭載されているアナログテレビ機能が利用できなくなることに関する周知徹底、また2010年6〜7月ごろに依頼が集中するとみられているアンテナ取り付け、調整工事などを挙げた。
当日は地デジ普及推進のメインキャラクターをつとめる草なぎ剛さん、推進大使をつとめる在京各局の女子アナたちが登場したほか、「地デジ化応援隊」として新たに王貞治さん、桂歌丸さん、北島三郎さん、高橋英樹さん、萩本欽一さん、茂木健一郎さんの6名の「大御所」を任命。原口大臣から直接任命状を受け取り、今後「ボランティア」として普及推進に協力していく意向を明らかにした。
地デジ完全移行まで残り1年を切ったことで、解決すべき課題もより浮き彫りになってきた。現状、対策の遅れが指摘されているのが「都心部でのビル陰視聴障害」。全国での対応率は47.8%にとどまっており、特に関東、東海、近畿の3大都市圏においてより重点的な対策が必要とされている。
また、下村氏が触れた「アンテナ工事」については、その必要性を含めた周知広報の強化が求められる。VHFアンテナのみでほとんどの放送サービスが受信できる関東地方などではUHFアンテナの存在自体知られていない恐れもあり、テレビをデジタル化していてもアナログ放送を受信しているケースも指摘されている。
こうした点について、Dpaではテレビ用告知スポットを含むさまざまな方策で周知広報を徹底していく構えだ。
また、当日はかねてより早期移行のモデルケースとして準備が進められてきた石川県珠洲市が地上アナログの「完全停波」を実施した。関係者のほか、都内のイベント会場で見守った原口氏らも本番へ向けて自信を深めた様子を見せたが、「(成功の)決め手となったのは地元電気店らの丁寧な訪問活動」(珠洲市長の泉谷満寿裕氏)という話からもわかるとおり、最終的には個別対応を含めた人海戦術が必要な情勢だ。
現状、個別世帯対応は日本ケーブルテレビ連盟、全国電気商業組合連合会の協力によるものにとどまっており、Dpa、あるいは総務省が主導する形では実施されていない。5月末に示された「浸透度調査」によれば、現段階でも「来年7月24日のアナログ放送完全停波」認知度が100%に到達しておらず(96.6%)、全国、地域含むメディアによる周知の限界を示している。こうした個別対応をどう強化していくのかも、今後の注目点の1つといえるだろう。
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