WEBにおけるコミュニケーションには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。ナイキジャパンの「Tulio Twitter Statue〜闘う気持ちをTwitterで刻め〜」キャンペーンには、人間の感情を刺激するストーリーがありました。
このキャンペーンは、スポーツ関連商品メーカーのナイキが世界で展開しているキャンペーン、「未来をかきかえろ」の一貫として、日本国内で実施されているものです。起用されているのは、2010 FIFA ワールドカップ 南アフリカ大会にて、活躍している田中マルクス闘莉王選手。(ワールドワイドなキャンペーンでは、ドログバ、ルーニー、クリスティアーノ・ロナウドなどの選手が起用された大がかりで美しい映像が話題になっています)
WEBサイトを訪れると、まず白い長方形のブロックをロボットアームのドリルが削っていく映像が現れます。その映像に合わせて、闘莉王選手のナレーションが聞こえてきます。「ぼくは日本人だ」から始まるメッセージ。力強いマニフェストを読み上げているのです。「世界の予想は裏切れる」「ディフェンダーはその時攻撃者にもなれる」など、来るべき戦いに向けた、熱い闘志があふれる内容になっています。
やがて白いブロックは徐々にけずられていき、人の形になっていきます。そう、それは等身大の闘莉王像(Statue)が創られていくシーンだったのです。そうやって創られた真っ白な闘莉王像は、東京原宿にあるNIKEストアに飾られています。
このキャンペーンの肝は、そんな闘莉王選手に向けて、勝利を願うメッセージをツイッター経由で応募できるということです。応募されたメッセージはWEBサイトで閲覧することができます。
さらにその中から、特別に選ばれたメッセージは、何とショップにある闘莉王像に刻み込まれるのです。ドリルで、闘莉王像の股あたりにメッセージが刻み込まれる様子は、ストア内に設置されているライブカメラを通じてみることができました。
このサイトは時期的なものもあり、とても話題になっています。では何が受け手の心を動かすのでしょう。それは、ただWEBサイトを見るだけでなく、闘莉王選手を、日本代表を応援したいという気持ちを、ツイッターを通して表現できるからです。一般のサッカーファンが参加できるストーリーを作っているのです。
またキャンペーンの仕組みも、WEBサイト、ツイッター、ストアを連動するようにうまく考えられています。サイトでみて、実物大の闘莉王像を見たくなり、ショップに行く人も多いはずです。
このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。あなたの会社のWEBコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?
◇ライタプロフィール
川上徹也(かわかみ てつや)
広告代理店で営業局、クリエイティブ局を経て独立。フリーランスのコピーライターとして様々な企業の広告制作に携わる。また、広告の仕事と並行して、舞台脚本、ドラマシナリオ、ゲームソフト企画シナリオ、数多くのストーリーを創作する仕事にかかわる。近著に「あの演説はなぜ人を動かしたのか」(PHP新書)
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