WEBにおけるコミュニケーションには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。インターネットショット上のショピングサイト「カラメル」が実施中の「世界1周雑貨バイヤー募集」には、人間の感情を刺激するストーリーがありました。
これは「カラメル」が、2010年内にオープン予定のネットショップ「世界1周雑貨店」の専属バイヤーを一般の人間から広く公募するというもの。「世界1周雑貨バイヤー」に選ばれると、世界中を旅して立ち寄った各都市の様々な雑貨を買い付けるという仕事が与えられます。
世界各国の最大15都市を約1カ月から2カ月の間で巡り、各所においてバイヤー自身のセンスで雑貨を買い付けします。旅費、雑貨の買い付け資金は「カラメル」が負担。また報酬については、基本報酬100万円に加えて、「世界1周雑貨店」で販売した雑貨の売上に応じて支給する出来高報酬を最大100万円と設定し、合計最大200万円の報酬を支給するというものです。
応募は20歳以上で1〜2カ月旅に出ることができる人であれば誰でも応募できます。応募者は、顔写真等のプロフィール・自己PR・買い付けルートなどを記入すると、特設ページにエントリーできます。それを見た一般ユーザーが投票。1月25日昼12時までの投票で上位20名に入ると最終審査に進出。そこから面接で1〜3名に絞られ、バイヤーが決定する仕組みです。特設ページではすべての応募者のプロフィールを見ることができ、誰もが投票できます。そして現在の投票状況もリアルタイムでわかります。
このキャンペーンは、ネットで非常に話題になっています。応募者総数も1月16日現在ですでに4300名を超えています。応募者たちは、友人知人をはじめ、ブログ等でも投票を呼びかけるので、「世界1周雑貨バイヤー」のことを知る人が飛躍的に増えていっているのです。では、何が多くの人の心を引きつけたのでしょうか?
それは「世界1周雑貨バイヤー募集キャンペーン」にストーリーがあったからです。こんな時代になっても、世界一周という響きは魅力的です。応募者にとっては、渡航費用はすべて主催者側が持ってくれ、なおかつ報酬がもらえるというお金の面のメリットも大きいです。しかし何よりも、応募者を惹きつけたのは、「世界1周雑貨バイヤー」というストーリーの主人公になれることだったのです。
実際にバイヤーになれば、買うだけでなく、ブログなどで買い付けの様子を詳細にレポートするという任務も与えられます。その様子は、多くの人の目に触れることになり注目されます。日常ではありえない、まさにストーリーの主人公になれるという訳です。
その注目は、もちろん、「カラメル」というサイトにも集まります。募集だけでなく、実際にバイヤーが海外に行ってからの展開も注目されていくでしょう。今まで、「カラメル」のことをまったく知らなかった多くの人たちも、「ユーモアと物欲を刺激するショッピングガイド」とキャッチフレーズとともに、「カラメル」の存在を認知しつつあります。もしそれだけの認知度を純粋な広告で得ようとすれば、このキャンペーンにかかった何十倍もの費用が必要になっていた筈です。
このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。あなたの会社のWEBコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?
◇ライタプロフィール
川上徹也(かわかみ てつや)
広告代理店で営業局、クリエイティブ局を経て独立。フリーランスのコピーライターとして様々な企業の広告制作に携わる。また、広告の仕事と並行して、舞台脚本、ドラマシナリオ、ゲームソフト企画シナリオ、数多くのストーリーを創作する仕事にかかわる。近著に「あの演説はなぜ人を動かしたのか」(PHP新書)
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