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解説:日立が描く新たな成長戦略でカギとなる「創業の原点」とは

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 今年創業100周年を迎える日立製作所(日立)が、2012年度に売上高で10兆5000億円、営業利益率5%以上、さらに純利益で2000億円台の安定確保を目標とする、中期経営計画を発表した。

 日立社長の中西宏明氏は、現状を「守りから攻めに転換するターニングポイント」とし、「日立グループの総力を結集し世界有数の社会イノベーション企業を目指す」と宣言することで、成長戦略を描く姿勢を示した。

中西宏明氏 日立社長の中西宏明氏

 ここ数年の大規模な構造改革では「売上高の3割相当を対象に、強化、転換をしてきた」という。それによって日立が成し遂げたのは、「コモディティ化した製品を遠ざけたものとなっている」と中西社長が表現するように、変動幅が大きく、収益確保の舵取りが難しいコンシューマー関連事業の見直しと、安定的成長と利益確保が見込まれる社会イノベーション事業に向けた地盤づくりだ。

 コンシューマー事業に関しては、コンシューマーPC事業からの撤退のほか、プラズマパネルの自社生産からの撤退、海外テレビ生産拠点の閉鎖などの再編を実施。OEMおよび生産委託を活用したローリスクモデルに切り替えた。一方で、社会イノベーション事業では、2015年度に全社売上高の7割を占めることを狙い、2012年度までの3カ年で1兆円の設備投資、6000億円の研究開発投資を行う計画を示している。設備投資額は、全社総額の実に7割に達する規模だ。

 日立が言う社会イノベーション事業とは、「情報・通信システム」「電力システム」「社会・産業システム」「建設機械」「高機能材料」の5事業部門で構成され、営業利益率では全社計画である5%を上回る、7%を目指す。

 中西氏は、「社会イノベーション事業は、日立の創業の原点」とする。中期経営計画の方針に「社会イノベーション事業による成長」と「安定的経営基盤の確立」を掲げ、成長戦略へのこだわりをみせる。

 「成長しない企業は駄目だという意識を社内に植え付けたい。成長しないと利益体質を強くできない」と語り、4月1日付けで、事業部門ごとの独立性を高め、責任の明確化を明らかにするカンパニー制を導入している。これも成長に向けた布石となる。

 一方で、カンパニーごとの戦略として、情報・通信システム事業に関しては、サービス事業を主軸にした転換を急ぐ考えだ。

 2015年度の同部門の業績目標は、売上高が2兆3000億円、営業利益率は8%。なかでもサービス売上高は1兆5000億円と、65%の売上高構成比を目指す。

 情報・通信システム事業の柱は、「グローバル事業の強化・拡大」「事業の高付加価値化・サービス化」「経営基盤の強化」の3点。さらに、IT統合サービスにおいては、大型買収による事業基盤および顧客基盤の獲得を狙うとして、M&Aを積極的に展開していく姿勢も示した。そして、社会イノベーション事業の柱のひとつである情報・通信システム事業分野への取り組みは、スマートグリッドの広がりに向けた施策も重要なテーマとなる。

 また中西氏が掲げる、全社成長に向けた柱がグローバル事業の強化となる。中西氏は、「グローバル戦略は、成長のためのエンジン」と位置づけ、2009年度には41%だった海外売上高比率を、2012年度には50%強へと拡大する計画を打ち出した。現地主導体制や、地域ごとのきめ細かな戦略展開などが海外事業における成長の柱となる。

 だが、その一方で、肥大化しすぎた日立グループの再編にも、引き続き取り組む姿勢をみせる。「現在、日立には40の事業体があるが、厳しく採算性をみて、今後も再編を続ける。事業を絞り込む方向で運営したい」とし、継続的な構造改革にも取り組む意向を示した。

 「構造改革はまだ道半ば」という認識が中西氏のなかに強く残っていることもうかがえる一方で、創業100周年を機に成長戦略を明確に打ち出した点も興味深い。「次の100年に向けた基盤を作る」と同氏が語るように、強い一歩を踏み出す体制は整いつつあるようだ。

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