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電子書籍市場の課題と可能性--慶應義塾大学シンポジウムから - (page 2)

永井美智子(編集部)2010年04月15日 08時00分
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 電子出版にも意欲的で、自社サイトで電子書籍の配信も始めている。「今までは会社が小さいことが不利だったが、ここ1〜2年で風向きが変わった。電子書籍にとってはメリットだ」(干場氏)

 電子書籍の魅力について、干場氏は「紙をそのままデジタル化するのではなく、ソーシャルネットワークとの連携や検索機能の導入など、インターフェースが変わることで表現形態が多様化できる」という点を挙げる。また、出版物を英訳して海外向けに販売するのもやりやすくなったといい、「Kindleは英訳物を世界に売れるチャンス」と断言した。

 慶應義塾大学の河内氏は、村上春樹氏のような著名な著者と、信頼関係を結んでいる編集者が独自に電子書籍を作る可能性について触れ、「編集者が著者といろんな形で出版物を作れるようになるという意味で、面白い時代になった」と期待を寄せた。

 ジャーナリストの津田氏は「出版した本の内容が古くなっているのを、電子書籍でアップデートできないかと、iPhoneアプリを開発している」と自身の取り組みを紹介。音声や動画での解説を入れるほか、書籍の内容の一部を読者が引用してTwitter上で紹介できるよう、Twitter連携機能を盛り込む考えだという。収益については、Appleへの支払い料を除いた分を、津田氏、出版社、アプリを開発するナタリーの3社で均等に分ける考えとのことだ。

著作権を登録制にすべきとの声も

 弁護士の福井氏は、電子書籍をめぐる課題として書籍に関する権利の問題を挙げる。出版社が書籍のデジタル化について、書面できちんと契約関係を結んでいる例はまだ少ないという。特に雑誌に関しては契約書を交わしている率が低いとして、「権利調整をしないといけない問題がたくさんある」と指摘した。

 また、Googleブック検索が、著作権者がわからない「孤児著作物」の問題を明らかにしたとも話す。日本では著作権者が不明な場合に、文化庁長官の裁定を受けることで著作物を利用できる制度がある。しかし、この制度は「使い勝手が悪く、年に数件しか裁定がされていない状態」(福井氏)だという。このため、「実際の運用は民間に任せ、だれでも使えるような制度にするべき」と話した。また、将来的に孤児著作物が生まれることがないよう、著作権を登録制にすべきと提言した。

 このほか会場からは、電子書籍をめぐるプライバシーの問題についても指摘がなされた。その人がどんな本を読んでいるかという情報は個人の思想信条に関わるため、プライバシー保護の観点からの議論がもっと必要だというのだ。

 また、インターネット上ではすでに漫画をスキャンしたファイルが無料で出回っていることを危惧する発言もあった。「正規の市場を作り上げなければ、利用者は結局、別のところでコストを払うことになる」(会場)と、コンテンツにきちんとお金が支払われる仕組みの構築を求める声が上がっていた。

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