富士通前社長の野副氏が記者会見:当初は法的措置を検討していなかった - (page 2)

冨田秀継(編集部)2010年04月08日 01時13分

野副氏側は法的措置を検討していなかった

畑敬弁護士 畑敬弁護士

 野副氏が富士通に社長辞任の取消を求める文書を送付したことが明らかになったのは3月5日。3月6日になり富士通は、社長辞任の理由であった当初の「病気療養」を撤回し、同日の臨時取締役会で野副氏を相談役から解任している。

 3月7日には野副氏の代理人を務める畑・植松法律事務所の畑敬弁護士が、社長解職の手続き自体に大いに問題があるとして真っ向から反論した。

 野副氏側は3月7日時点で、富士通に対して法的手段に訴える可能性を「極めて低い」とZDNet Japanに回答していた。その理由はこうだ。野副氏が文書を送付したのは2月26日。それ以降、双方の弁護士が話し合いを続けていたが、野副氏側に予告なく、富士通が3月6日に「一部報道について」を公表した。弁護士間で交渉を進めているなか、予告なくこのような文書が発表されるのは「異例」(関係者)の事態で、野副氏側は「極めて不愉快」(畑弁護士)としていた。また、この文書が「事実とあまりに異なる」(畑弁護士)ため、公にされた「一部報道について」の矛盾を武器に、引き続き弁護士間で話し合いを続けるとしていた。

 今回、野副氏が記者会見を開き、自身の主張を公の場で説明したということは、3月7日以降に再開した富士通との交渉が決裂したことを意味している。野副氏の記者会見終了後、畑弁護士はZDNet Japanの取材に対して、既に交渉の段階ではないことを認めている。

野副氏は日本で唯一グローバルの戦略を語れる人材だった

 会見にはテレビ、新聞、夕刊紙などの記者が多数押し寄せたが、そのなかにガートナージャパンのバイスプレジデント兼最上級アナリスト、亦賀忠明氏の姿が見えた。

 亦賀氏はZDNet Japanの取材に対し、「基本的にすべての国産ITベンダーは、グローバルで競争するための重要な能力が欠けている。しかし、そのことは長い目で見ておき、新しい人が(グローバルで戦略を立てて)実行力を見せてくれるのかと期待していた。野副氏はまさにグローバルで競争する能力を持っている人だったが、今回このようなことになってしまった。日本のITベンダーの将来を考える場合、暗澹とした気持ちになってしまう。今後の(日本のITベンダーに対する)期待値を下げてしまった」とコメントしている。

 野副氏に直接話を聞いた情報筋によると、2009年の早い段階で野副氏は「僕が社長になるなんて驚きだ」とした上で、「僕はもういつクビになってもおかしくない」と述べていたという。野副氏の前任として社長を務めていた黒川博昭氏は現場を熟知していたが、野副氏は海外経験こそ豊富でも現場に明るくなく、役員だけでなく事業部門の反発が強かったのではないかとしている。

 今回の一連の問題の焦点は、富士通がステークホルダーに対して適切に情報を開示しなかったことにある。今後の富士通の対応に注目が集まる。

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