Microsoftが米国時間3月16日に公開した「Internet Explorer 9(IE9) Platform Preview」は、多くの標準を使っても大丈夫だという強いメッセージをウェブプログラマーたちに発信した。しかしその中の1つ、ウェブビデオの標準に関しては、Microsoftは論争の行き詰まりをさらに深い袋小路に押し込んでしまったかもしれない。
問題となっている標準は、Adobe Systemsの「Flash」やMicrosoftの「Silverlight」といったプラグインを必要としないウェブビデオに関するものだ。これはHTML 5標準の大きな要素の1つである。同標準は、ウェブページとウェブアプリケーションの能力の拡張を目的として現在策定されている。
Microsoftがデモを行ったIE9の荒削りなバージョンには、H.264という特定の技術を使用してエンコードされたHTML 5ビデオが含まれている。このエンコードおよびデコード技術、すなわちコーデックは、Appleの「Safari」でもサポートされている。
しかしMozilla Foundationは、オープンソースとなじまないH.264に強硬に反対しており、その代わりにライバルであるOgg Theoraコーデックをサポートしている。「Opera」も新バージョン10.5でこの陣営に加わった。Googleの「Google Chrome」は両方をサポートしており、Ogg TheoraとH.264は3対3の同点となった。
MicrosoftがH.264側に加入したことは、驚くべきことではない。同社はこの技術に関する多くの特許を持っており、同社を含め特許を持っている数社を代表して、MPEG LAという団体がこの技術のライセンスを提供している。そしてもちろん、Microsoftはプロプライエタリな技術を恐れはしない。H.264のサポートは「Windows 7」にも含まれている。最後に、大方の意見では、H.264はOgg Theoraよりも品質が優れているという。
Microsoftが将来Ogg Theoraのサポートを追加するということも、考えられないことではない。しかし少なくとも今のところ、Microsoftはこの行き詰まりを解消するようなことをほとんどしていない。したがって、ビデオを利用するウェブサイトは、さまざまなブラウザ用に2種類のストリームを用意するか、あるいは短期的にはこちらの方がありそうだが、Flashを使い続ける必要があるだろう(ちなみに、多くのFlashビデオはH.264コーデックを使っている)。
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