事業者側は多種多様な自主的取り組みを実施してきたが、東京都が提出した第三十号議案は、青少年問題協議会の答申を踏まえた厳格な規制を推し進める内容だった。主な内容は以下のようなものだ。「インターネット・携帯電話に関する利用環境等の整備」の項目に追加される規定を以下に挙げる。
1、携帯電話の推奨制度の創設
都は、子どもの年齢に応じ、青少年の健全な育成に配慮した機能を備えている携帯電話等を推奨することができる。
2、フィルタリングの実効性の確保
事業者は、フィルタリングが、青少年がインターネットを利用して被害に遭うこと等を容易にする情報を閲覧する機会を最小限に止めるものとなるように努める。
3、フィルタリングを解除する場合の手続きの厳格化
- ア 保護者は、フィルタリングの解除に際し、青少年が有害情報を閲覧することがないよう適切に監督する等の正当な理由等を記載した書面を提出する。
- イ 事業者は、保護者に対する説明書の交付、正当な理由等の記録・保存を行う。
- ウ 都は、イの義務に違反した事業者に対し、勧告・公表及びこれに必要な調査等を実施することができる。
4、青少年のインターネット利用に係る保護者、都の責務
- ア 保護者は青少年のインターネット利用状況を適切に把握し的確に管理するよう務める。
- イ 保護者は、自らもインターネット利用に伴なう危険性等についての理解及びこれらの除去に必要な知識の習得に努め、青少年とともに利用に当たり遵守すべき事項を定めるなど適切な利用の確保に努める。
- ウ 都は、違法な行為等をした青少年の保護者に対し、再発防止に必要な措置をとるとともに、適切に監督するよう指導又は助言及びこれに必要な調査等を実施することができる。
5、青少年や保護者に対する効果的な啓発
- ア 都は、青少年がインターネットの利用の危険性及び過度の利用による弊害について適切に理解し、これらの除去に必要な知識を習得することができるようにするため、啓発について指針を定める。
- イ 事業者は、青少年がインターネット利用に伴なう危険性等について適切に理解できるようにするための啓発に努める。
議案は冒頭の答申とほぼ同じ内容だ。東京都が青少年に望ましい携帯電話の機種を推奨する、都が事業者に対しフィルタリングの水準を定める、保護者でもフィルタリングを解除するのに正当な理由を記した書面の提出が求められる、といったことが現実のものになろうとしている。
これに対し、民間団体、コミュニティサービス事業者から一斉に反対の声があがった。
特定非営利活動法人 東京都地域婦人団体連盟、東京大学大学院 教授 長谷部恭男氏、ネット教育アナリスト 尾花紀子氏、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構、一般社団法人ECネットワーク、社団法人電気通信事業者協会、社団法人テレコムサービス協会、社団法人日本インターネットプロバイダー協会、一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム、特定非営利活動法人CANVASは3月12日に共同記者会見を開いた。
これらの団体および識者は、都が提出した条例の改正案には憲法の保障する表現の自由、通信の秘密を侵害するおそれがあると主張している。また答申に対してミクシィの笠原氏が指摘したのと同様に、青少年インターネット環境整備法との齟齬を指摘し、反対を表明した。
仮に条例を改正するのであれば、以下の事項が最低限守られるべきだと主張した。
- 言論及び表現活動に対し、都をはじめとする公権力による恣意的な関与がなされない条例とすべきこと。
- 多様な目的や機能をもった民間の組織や活動が認められる条例とすべきこと。
- 利用者及び事業者が多様な基準から選択できる権利が保障される条例とすべきこと。
- 憲法や青少年インターネット環境整備法等の法律の範囲内での条例改正とすべきこと。
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