絵文字が普通の文字とちょっと違うところは、その定義に関しては誰もよく分かっていないというところです。ユーザーたちが勝手に使っている。この文字はこういう意味じゃない? みたいに。私はそういうところに、文字の誕生を見ている気がします。
文字というのは、最初は誰かが作ったものかもしれないけど、これは便利だね、みたいにして少しずつ使う人が増えて、何百年もたつうち完成したものだと思います。もしかしたら絵文字はそういう歴史をたどっている最中なのかもしれない。
ただし私達は、完成するまで何百年も符号化を待つわけにいかない。絵文字というのは、今符号化しないと意味がない。
今ニーズがあるからです。携帯電話でもなんでもそうじゃないですか。やるんだったら今やったほうがいい。
絵文字に関しては待つことは良くないと思います。なぜかというと、絵文字は多様化してきていて、ある人によっては目的語の一部のように使ったり、あるいは感嘆詞みたいに使う人いる。そういう歴史が浅いものなので、待てば待つほど意見が分かれてしまいます。意味が安定するまで待っていたら、必要とされる時に使えなくなるでしょう。
絵文字が符号化してもっと使えるようになれば、ブログとか、Twitterとかでどんどん使われるようになるでしょう。それだけじゃなくて、他の国でも使われるようになると思いますね。そうしたらその国の文化も、またちょっと別のものに変わるかもしれない。だけどやはり日本が一番よく使われているので、リードは日本のユーザー達がとることになると思います。
日本人の言語に関する感覚で良いところは、なんでも使ってしまえというところだと思うんです。便利なものがあるんだから使っちゃえ、みたいな。その精神でここ150年近代化してきたわけじゃないですか。いいんですよ、それで。便利なセットがあるんで、それをきちんと定義して符号化してしまえば、次のステップになるんです。
ものすごく楽しみですね、これから絵文字がどうなるのか。でも、それは日本の人たちにおまかせしますよ。なにか彼らが考えてくれるでしょう。大変なことになるかもしれないですよね。日本語が変わってしまうかもしれない。でも日本語って常に変わってきてるんだから、それでいいんですよ。
ぼくたちは言語の使用を楽しくしていく。それでいいんじゃないですか。絵文字を符号化したことによって、その楽しみ方がうんと広がる。それが大事だと思いますよ。縁の下の役割です。たいしたもんじゃないですけど、その助けにはなるんじゃないかな。
以上が絵文字をめぐる桃井勝彦氏のインタビューだ。2002年に外資系携帯OSベンダーが絵文字の提案を試みていたこと、今回の絵文字符号化のルーツはGmailモバイルにあり、それを発案したのは日本のGmailチームだったこと、あるいはAppleが提案に加わってきた経緯や、Microsoftも一緒だったこと、さらにプロジェクトの陰に日本の専門家達の助言があったことなど、ここで初めて明かされる事実は多い。また、絵文字のみならず母語である日本語に対する桃井氏の思いを聞けたことも良かった。このあたりは日本を離れて久しい桃井氏ならではのものと思える。
しかし、Googleが絵文字に対応した意味を考える上で、最も注目されるのは、プロジェクトが始まったタイミングが2006年秋ということではないか。
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