日本経済新聞社は3月23日、新聞紙面をそのままPCや携帯電話で見られる「日本経済新聞 電子版」(Web版)を創刊する。利用料金は新聞購読者の場合、月額1000円。現在提供しているニュースサイト「NIKKEI NET」の機能を拡張するもので、無料コンテンツも用意する。
Web版ではNIKKEI NETで提供中の日々のニュースや株式投資情報に加え、子会社である日経BP社が提供する技術情報や、日本経済新聞の紙面などを提供する。「これまでウェブに載せてこなかった特ダネやコラムなども掲載する」(電子新聞編集本部 本部長の新実傑氏)といい、新聞紙面に載る情報は基本的にすべてWeb版でも見られるようにする。ただ、新聞紙面と一部の記事については、有料会員のみが閲覧可能。無料の会員登録をしたユーザーであれば、有料会員限定記事を月20本まで読めるようにする。
新聞紙面については東京最終版を掲載。朝刊は4時、夕刊は15時30分に公開する。新聞紙面と同じレイアウトをFlashを使って表示するほか、テキストでも表示する。PCと携帯電話の両方に対応する。日本経済新聞社 代表取締役社長の喜多恒雄氏は「今後はPCや携帯電話だけでなく、今後次々と登場するさまざまなデバイスにも対応したい」と意欲を見せる。海外ではAmazonのKindleやAppleのiPadといった電子書籍対応デバイスが登場しており、これらの動きを意識した発言とみられる。
有料会員に対しては、パーソナライズ機能「My日経」も提供する。過去の履歴をもとに関心がありそうな記事を推薦するほか、ユーザーが登録したキーワードを含む記事を自動で収集し表示する。また、過去5年分の新聞記事を月25件まで検索、閲覧できるようにする。ただし超過分は1件あたり175円かかる。
Web版を導入する理由について、喜多氏は「紙の新聞は今後も続くと考えているが、将来の大きな成長を期待するのは難しい。経営基盤を強化する上で、成長するデジタル分野を強化し、ここで収益を上げることが不可欠と考えた」と話す。さらに「簡単に成功するとは思っていない。(成功するまでに)5〜10年かかるかもしれないが、今スタートさせなければ10年後の成功はない」とし、具体的な売上目標などについては明言を避けた。
利用料金は日本経済新聞の定期購読者の場合、月額1000円。電子版のみの場合は同4000円。いずれもクレジットカード決済のみ受け付ける。金額については「紙の新聞の部数に影響を与えないことを前提に考えた」(同社)とのことで、まずは発行部数の1割に当たる30万人の有料会員獲得を目指す考えだ。なお、現在日本経済新聞社が提供している無料の会員制ニュースコミュニティサイト「日経ネットPLUS」の会員数が約30万人となっている。
有料課金収入のほか、無料会員の属性データを利用した広告や、電子新聞のシステム提供による収入も見込んでいる。Web版を開始するにあたって課金システムや購読者管理システムを新たに作ったといい、「これから始めたい同業者がいれば、我々のシステムを使えるようにしたい」と喜多氏は話し、他社にシステムを提供する考えを明らかにした。
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