企業による活用が盛んになってきたTwitter。なかでも報道機関はこぞってアカウントを開設し、Twitterの速報性を生かして情報発信している。iPhoneなどの新技術に関する勉強会「GAPブリーフィング」で、毎日新聞社の“Twitter担当者”である乗峯滋人氏が同社の取り組みを語った。
乗峯氏はデジタルメディア局に勤務する。2001年に記者として毎日新聞社に入社。その後、デジタル分野に興味を持ち、ニュースサイトの編集に関わってきた。
毎日新聞のニュースサイト「毎日jp」はページビューが約1億8000万、ユニークユーザーが約1900万(2009年7月)。「ユニークユーザーはニュースサイトのなかではおそらく1番多いのでないかと思う」(乗峯氏)
毎日jpではソーシャルメディアを使った取り組みが何かできないかと考えていたが、たとえば記者ブログを開設するというのは産経新聞の「イザ!」などでもやっている。さらにブログの場合、コメント承認の手間、荒らし、炎上などのリスクが高いため、どのような形でソーシャルメディアに取り組むかが課題だったという。
そこで目をつけたのがTwitterだった。Twitterを選んだ理由は3点。利用するのにログインが必要であること、ある程度実名性が担保されていること、成長が著しかったことだ。
毎日新聞ではいくつかTwitterアカウントを開設し、目的に応じて投稿内容と運用方法を変えている。
「たとえば、RSSをそのままTwitterfeedなどを使って投げるのは簡単だが、それだとただのRSSリーダーと変わらない。記事の見所、ちょっとした驚きなどを含めて流したかった。それが毎日jp編集部のTwitterアカウント」(乗峯氏)
アイコンである鳥のキャラクター「コッコちゃん」はTBSの豚のキャラクター、auのリスモをデザインした有名デザイナーによるものだという。
毎日jp編集部のTwitterはコッコちゃんがおすすめ記事がつぶやくという設定になっている。
ニュースの更新を随時知りたい人のために、「毎日jpニュース」というTwitterアカウントでは主なニュースのRSSをそのまま流している。
Twitterユーザーには欧米人の多いため、日本のニュースを英語で流すアカウント「英語でニュースを読む」も立ち上げた。
選挙用アカウント「毎日jp選挙」も用意した。このアカウントでは選挙に関わるニュースのみ流している。
毎日jpの記事には、はてなブックマークボタンと並んで「Twitterに記事を投稿するボタン」を設置し、ユーザーがほかの人に記事をお勧めできるようにした。
さらに検索APIを使って「毎日jpおすすめのつぶやき」というコーナーを設置した。ここでは毎日jp編集部、勝間和代氏、広瀬香美氏、英語でニュースを読むという4アカウントのつぶやきを一覧できるようになっている。勝間氏と広瀬氏は毎日jpで連載しているため、2人のTiwtterでのつぶやきを許可を得て掲載している。
そのほか、即時性を生かして都議選の速報を流したり、勝間氏、広瀬氏、漫画家の西原理恵子氏の3人が食事しているところを実況したり、広瀬氏がはるな愛氏のイベントにサプライズ出演するのを実況したりした。
「最近は広瀬氏がコッコちゃんにニュースについて質問するというコーナーが突然できたので、必死で答えている人がいる」(乗峯氏)
毎日jp編集部のアカウントには現在10万人弱のフォロワーがいる。「最初はここまで増えるとは思っておらず、1000人くらいいればいいと思いながら始めた。Twitterのおすすめユーザーに入れていただいき、Twitterの新規ユーザーのほとんどが登録してくれるようになった。コッコちゃんも記事をお勧めするときはかなり緊張して投稿している」(乗峯氏)
編集部がTwitterに投稿する際はクライアントソフトは使わない。乗峯氏は、「私はiPhoneも持っていないアナログな人間なので、Twitterのウェブサイトからコツコツと投稿している」と語る。
10万人にダイレクトにメッセージが届き、読者からも返信がくる。間違った投稿をすると大きな反響になる。Twitterアカウントは慎重に運用しているそうだ。
以前、広瀬氏がTwitterの歌を作曲したことがある。実はこれは毎日jpのTwitterボタンがきっかけだった。Twitterボタンの「t」という文字がカタカナの「ヒ」に見えたことから、「ヒウィッヒヒー」という言葉が生まれ、テーマソングが作られた。
乗峯氏はTwitterと毎日新聞の関わりについて、「本当にここまでくるとは思わずに始めたサービス。いろいろなことが混ざり合って面白いことができたのでは」と語る。
本来の目的はTwitterのつぶやきをきっかけとして記事を読んでもらうことだが、現状では効果は出ていないという。
「毎日jp全体におけるTwitter経由のアクセスは微々たる物。これからどこに向かっていくかは、実はまだわからない。マネタイズに関して戦略があるわけではないので、もう少し楽しみながら続けていって、何か次の展開が見えたらなと思う」(乗峯氏)
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