自ら立ち上げたヤフー「リスペクトしている」--グーグル新役員の有馬氏

鳴海淳義(編集部)2010年01月29日 10時55分

 1996年にヤフーを立ち上げ、常務取締役を務めた有馬誠氏が、1月1日にグーグルの専務執行役員営業本部長に就任した。Google AdWordsやGoogle AdSenseを中心とした、グーグル日本法人の広告営業を統括するという。

 グーグルの広告ビジネス、検索をはじめとしたサービス群の現状、そして目の前に立ちはだかるヤフーについて有馬氏に聞いた。

--グーグルの広告の現状を分析されたと思いますがどんな感触でしたか。

 まだまだ伸びる余地があると思いました。その理由は大きく分けて2つ。これはグーグルに限りませんが、検索連動型広告は非常に手軽に始められます。ただそのことをご存じない広告主さんはまだまだおられます。これはやり方次第でもっと知ってもらう余地があると思っています。

グーグル専務執行役員営業本部長の有馬誠氏グーグル専務執行役員営業本部長の有馬誠氏

 もう1つは、グーグルはこれまで広告代理店と一緒に営業してきてましたが、やはり広告主のニーズを直接お聞きしていかないと代理店さんとの協業もうまくいきません。広告主の懐に入って、そのニーズをしっかり掴んでくるために、まだできることがあります。

 大手広告主さんの一部のニーズを聞きますと、やはり彼らの広告予算のなかでオンライン広告、モバイル広告に割く予算は確実に上がっていってます。そういう営業活動をきっちりやれば、まだまだ伸びる余地があると思います。

 以上、2点の理由でまだまだ広告売上は伸ばせるでしょう。

--本社の決算を見ると売上は上がり続けています。日本の広告売上はどうですか。

 国別の数字はイギリス以外は公表しておりませんが、間違いなく日本も右肩上がりで推移しています。

 ただ、私は2009年は人材業界にいましたので、その不況の深刻さは身を持って感じていました。私もAdWordsを使っていましたが、出稿量を著しく減らしました(笑)。業界によって不況の影響をすごく受けたところはあります。特に人材や不動産など業績が厳しかった業界はやはり広告出稿が減ったと思います。

 その一方で、楽天さんの決算は売上20%アップと非常に好調です。ECは逆に不況だからこそ伸びたといえるかもしれません。そういう企業も我々のお客さんですので、合わせるとなんとか右肩上がりは維持できました。これまではすべての業界において広告出稿が伸びていましたが、2009年は少なくともそういう感覚とは違っていたと分析しています。

--ヤフー時代から広告営業の仕事をされていたのですか。

 ヤフー立ち上げの時期はあらゆることをやっていたんですが、メインは広告営業で、いわゆるバナー広告の市場を開拓することでした。代理店さんと一緒にゼロからやって面白い経験でしたが苦労もしました。

 もう1つ、自分自身でも強く関心を持って取り組んでいたのがサービス開発です。たとえばYahoo!ファイナンスやYahoo!トラベル、Yahoo!ショッピングなどの各サービスがありますよね。大きなサービスは1つのサービスで1000万人以上のユーザーを抱えるまでに成長しました。

 ヤフーには1996年に1号社員として入社しまして、会社の立ち上げと広告の責任者をやっていました。1996年当時は「インターネットの革新性とは何か」についてよく議論していました。そのとき私が強く思ったのが、たとえ一個人でも手軽に安く、情報を世の中に発信できるようになるということです。

 それは当然、企業にとっても同じことで、いままではマスメディアに高いお金を払わないとメッセージを載せられなかった。それがネットで大きく変わるのではないかと思いました。ネット広告の大きな使命は、自由に発信できるようになった個人や企業に対して、非常に手軽に誰かに見てもらうためのルートを用意することだと思っています。

 グーグルでのネット広告の仕事は大きく2つ意味があると思います。1つはいま申し上げたようにインターネットの革新性をドライブするということです。ただ単に物を売ってお金をもらうだけではなくて、価値を提供していくことを自覚しています。

 もう1つはそうやって得られたお金がどう使われるのかということです。グーグルの場合はそのお金がGoogle Earthなどの技術革新に使われることがすごくモチベーションになります。そういう循環を作りだしていくために広告主からお金をいただくという意義を強く感じています。

--ご自身でヤフーを立ち上げられた。ライバルとしては脅威でしょうか。

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