ニコニコ動画が新たな事業領域に足を踏み入れようとしている。次の舞台はミュージカル。そしてその中核にいるのが、舞台「ミュージカル『テニスの王子様』」(テニミュ)の生みの親である片岡義朗氏だ。
この64歳の現役プロデューサーは、ニコニコ動画を活用したミュージカルを実現すべく、1月にドワンゴに入社。執行役員として腕をふるう。
片岡氏は東急エージェンシー、旭通信社(現アサツーディ・ケイ)などでアニメプロデューサーとして活躍。手がけた作品には「タッチ」「ハイスクール!奇面組」「HUNTER×HUNTER」などがある。その後2009年12月までマーベラスエンターテイメントの取締役を務め、「蟲師」などのアニメ化のほか、漫画原作のミュージカルも手がけた。その代表作の1つがテニミュだ。
テニミュは1999年から2008年3月まで週刊少年ジャンプで連載された「テニスの王子様」を舞台化したもの。新人の男性俳優を起用し、キャストを「卒業」という形で入れ替えながら公演を続けるスタイルが人気を集めており、累計観客動員数は90万人を超えるという。ニコニコ動画にはテニミュの動画が投稿され、「俺たちの」が「俺タティーノ」といったように、歌詞が違う言葉に聞こえる「空耳動画」として人気になった。
その片岡氏がなぜ、ドワンゴに参画することになったのか。片岡氏は、「ニコニコ動画でミュージカルをやりたい、という構想をドワンゴから聞いたとき、『これは自分がやらなければいけないと思った』」と語る。
ニコニコ動画では女性ユーザーの拡大が課題になっており、ドワンゴが目を付けたのがテニミュの人気だった。「空耳」は一般の人でもわかりやすく、盛り上がりやすいと考えたようだ。似たようなミュージカルができないかと考え、以前から片岡氏と知り合いであった西村博之氏らが話を聞きにいったのがきっかけだったという。
「ニコニコ動画は動画上に書き込みができる機能が面白い。舞台上の人がその書き込みに反応したら、書き込んだ人はすごく喜んでくれるんじゃないか。数千年ある演劇の歴史の中でそれは初めての試みなんじゃないか、と思った」
もともと、ニコニコ動画でテニミュが人気になっていることは知っており、投稿された動画も見ていた。「つい笑っちゃう、面白いものが多かった。歌が下手な役者がいたのは事実だけれども、それに対して見ている人が愛情を注いでくれているというのがよくわかった。こういう楽しみ方があるのかと思っていた」
一方で、片岡氏は既存の舞台に限界を感じている部分があった。それは料金の問題だ。大勢の人が参加し、大きな会場を借りて行う舞台は、どうしてもチケット代が高くなってしまう。例えば2008年にチケットを値下げして話題になった劇団四季でも、1枚8800円からだ。1枚1万円以上する舞台も多い。
「これではとても中学生には手が届かない。でも、舞台の最大の楽しみである、時間や空間を共有するという臨場感を、(ニコニコ動画を使えば)ネットを通じて味わえる」
劇場の場合は入場者数に物理的な制限があるが、ネットであれば数万人規模が見ることも可能だ。来場者への通常のチケットに加えて、ニコニコ動画視聴用のEチケットを販売することで数を売り、1枚あたりの価格を下げられるとの算段もあるようだ。
「(ニコニコ動画のミュージカルは)演目も、ビジネスモデルも、見に来るお客さんの層も(既存の舞台から)変わるだろう」
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