政治家は「炎上」で鍛えられるべき--ネット選挙活動の解禁に動く与野党の思い - (page 2)

永井美智子(編集部)2010年01月08日 08時00分

 このほか、選挙期間中の戸別訪問の解禁なども盛り込んだ上で、1月18日に招集される予定の次の通常国会で法案を提出し、7月の参議院選挙に間に合わせたいと高井氏は話す。

 一方の自民党も、選挙制度調査会で選挙のネット解禁について議論していた。片山氏は「自民党がネット解禁に消極的だったのは事実」としながらも、「選挙の情報源として、ネットが発展することはあっても後退することはない。お金がかからないツールという認識だ」と語る。

 最大の懸案は、誹謗中傷やなりすましへの対応だという。このため、メールアドレスの表示義務を盛り込むことに加えて、氏名等の虚偽表示罪(公職選挙法第235条)、選挙の自由妨害罪(同第225条)を見直してネット上の行為も対象に入れ、違法行為として罰せられるようにしなければならないとした。

 自民党案は民主党案よりも保守的で、選挙活動に利用できるネットサービスは候補者のホームページに限定し、ホームページの作成費用は選挙運動費用に算入することで、一定金額内に収める。また、メールによる選挙運動は引き続き禁止する。これはメールの場合大量になりすましができてしまうことなどを懸念しているためだという。

片山さつき氏 自民党 前衆議院議員の片山さつき氏

 ただ、片山氏は「個人的にはメール利用の一部解禁やメールマガジンの利用などは認めてもいいのではないか」と話す。Twitterについても、普段から利用していることもあり、「2ちゃんねるなどに比べて、クレイジーな“炎上”があまりない。こういったものなら、ある程度解禁してもいいのではないかという気がする。個人のアカウント設定のところで、何かしらの網をかけられないのか」と積極的な姿勢を見せた。

 片山氏はTwitterを通じた議論に手応えを感じているようだ。「Twitterを始めて1カ月ほどだが、テーマと時間帯を選べば1時間以内に50件程度の反応が来るような議論ができる。政治活動をする上でこういう場を持っていないといけないと思うし、もっと前からやっていたら違ったかもしれないとも思う。(ほかのTwitterユーザーに)『こんなに喋りやすい人だとは思わなかった』と言われた。世間には自分の意見を言いたい人がいる。双方向性メディアを取り入れることが今からでも非常に重要であり、うまく使ったところが次の選挙では勝てるのでは」とした。

 しかし、自民党内ではネット解禁に積極的な人とそうでない人の差が大きいようで、「年齢的にITリテラシの低い人が意思決定者に多い」(片山氏)と苦汁の表情を浮かべる一幕もあった。

 両党の意見を聞いた嶋氏からは、「ネット解禁は与野党が一緒になってやって欲しい」の意見が出た。多数決では、どうしても与党に有利なものになってしまうからだ。これに対して片山氏は「自民党が足を引っ張ったということであれば、それ自体がマイナスになる」とネット解禁を推進していく考えを示した。ただ、党としてはまだ明確な立場が決まっていないとのこと。一方、高井氏も「ネットの解禁で浮動票を取る人が有利になると、固定した地盤や強固な応援会を持っている人にとっては不利になる。それは与野党ともに反対する可能性があり、民主党でも反対する勢力はあるだろう」とし、与野党の対立というよりも、新旧世代の対立になる可能性を示唆した。

 また、ネット上の“炎上”を懸念する声に対して、嶋氏は「炎上するような発言した人はその場で鍛えられるべき。そうでないと外交の場で戦えない」(嶋氏)と断言し、ネットは政治家を鍛える場にもなると期待を寄せていた。

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